M&Aによる事業譲渡をサポートしてくれる事業承継ファンド
中小企業経営者の高齢化が進む中、「後継者や事業の売却先が見つからなくて困っている」という企業は少なくありません。
近年はM&Aによる事業承継の動きが活発化しており、事業承継ファンドのニーズが高まっています。
そこで今回は、事業承継ファンドを利用するメリットやデメリットを解説するとともに、事業承継ファンドの選び方についてもご紹介していきます。
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目次
事業承継ファンドとは?
後継者が決まっていない企業や、経営状況の悪化にあえぐ企業を対象に支援を行うのが事業承継ファンドです。
事業承継ファンドは後継者の育成や後継者探しをサポートするだけでなく、業績を改善するためにコンサルタントを派遣するなどの経営支援サービスを提供しています。
経営状況が改善すれば株式の価値が高まるため、M&Aを行って企業を売却する際に生じる利益を株主に分配することができます。
【事業承継ファンドの魅力】
経営者 | 投資家(株主) |
---|---|
・経営復帰の資金が得られる ・事業の存続・発展の期待も可能 |
・経営状況が改善すれば、M&Aによる利益を分配してもらえる |
事業承継ファンドを利用する3つのメリット
・後継者問題が解決する
・経営再建が図れる
・売却益が確保できる
事業承継ファンドを利用するメリットは、上記の3つです。
ここからは、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
後継者問題が解決する
事業承継ファンドは、投資先企業の価値を高めて株式の売却益を上げることを目的としています。
企業価値を高めるには将来にわたって経営を安定化させる必要があるため、後継者不足によって事業の存続が困難になっている企業に対しては、経営者から株式を譲り受けて一時的なオーナーになることもあります。
事業承継ファンドがオーナーになっている間は経営者が不在になる心配がないため、余裕をもって後継者を探すことが可能です。後継者候補の経験が不足している場合は、後継者育成の支援を受けることもできます。
経営再建が図れる
事業承継ファンドは、数々の企業を支援してきた経験やノウハウを豊富に持っているため、業績が悪化している企業の「経営再建」をサポートしてくれます。
事業承継ファンドは多方面の業種に独自のネットワークを持っているので、経営を存続するための資金調達や販売網の構築といった課題を解決することができます。
売却益が確保できる
経営状況を改善すると企業の価値が高まるため、株式の売却益を増やすことができます。
後継者がいない企業や、経営不振が続いている企業は株式の評価が低く、M&Aを行っても安く買い叩かれてしまう可能性が高いです。
事業承継ファンドの支援を受けて経営状況を改善すれば、企業価値が高まって買い手が増えるだけでなく、株式の売却益も確保できるため、経営者にとって大きなメリットがあります。
事業承継ファンドの2つのデメリット
・必ず支援を受けられるとは限らない
・事業承継ファンドに結果が左右される
事業承継ファンドを利用するデメリットは、上記の2つです。
本項では、それぞれのデメリットについて解説をしていきます。
必ず支援を受けられるとは限らない
事業承継ファンドは、経営再建や企業の存続をサポートしてくれますが、必ず支援を受けられるわけではないことに注意が必要です。
あくまで投資活動であるため、将来性がない企業や経営再建の可能性が乏しい企業は投資を受けることができません。
事業承継ファンドに結果が左右される
事業承継ファンドには様々なタイプがあるため、自社に合ったファンドを選ばないと事業承継に失敗する可能性があります。
事業承継ファンドによって得意な業種や業界が異なるので、必要な支援を提供してくれる事業承継ファンドを選ぶことが大切です。
事業承継ファンドの選び方
・実績や得意分野
・経営者との相性
・投資資本や資金調達力
・利益のみを追求するファンドは避ける
事業承継ファンドを選ぶ際に重視すべきポイントは、上記の4つです。
ここからは、それぞれのポイントについて解説を行います。
実績や得意分野
事業承継ファンドによって得意分野が異なるため、自社に適した支援が受けられるか事前に確認しましょう。
ほとんどの事業承継ファンドの公式サイトでは、投資実績や運用体制などが紹介されています。投資実績を見るとファンドの得意分野がわかるので、支援の相談を持ちかける前にチェックしておくと良いでしょう。
経営者との相性
実績や得意分野のチェックだけでなく、事業承継ファンドと経営者の相性も確認することが大切です。
事業承継ファンドと自社の相性が悪いと、経営再建の方法や後継者の育成方針が一致せず、事業承継が円滑に進まなくなる恐れがあります。
事業承継の進め方について方針のすり合わせを行い、どうしても一致できない場合はほかのファンドに変更することも検討しましょう。
投資資本や資金調達力
事業承継ファンドによって資本力や資金調達力は大きく異なります。
経営再建やM&Aを実施するためには多額の資金が必要なため、ファンドの資金調達力が不足していると、事業承継が失敗してしまう可能性もあります。
事業承継ファンドを選定する時は、資本力や資金調達力にも注目すると良いでしょう。
利益のみを追求するファンドは避ける
利益のみを追求する事業承継ファンドは、利用しないように注意しましょう。
利益のみを追求するファンドは、一時的に株式の価値だけを高めて、経営存続の基盤を整えずに企業を売却する恐れがあります。
事業承継から間もなくして企業が倒産してしまう可能性が高いので、経営を安定・発展させていくような支援が受けられる事業承継ファンドを選ぶようにしましょう。
おすすめの事業承継ファンド3選
ファンド名 | おすすめ企業 | 投資実績のある業種 | 特徴 |
---|---|---|---|
日本投資ファンド | 中小企業・中堅企業向け | ・部品製造業 ・菓子製造業 ・リフォーム業 |
・支援審査のハードルが低い ・資金調達力やノウハウが豊富 |
SBI地域事業承継ファンド | 地域の中小企業・中堅企業向け | ・ヘルスケア ・介護 ・食品 ・飲料業 |
・高い資金調達力 ・地方創生を意識した取り組み |
中小機構ファンド事業部 | 中小企業・ベンチャー企業向け | ・多業種に対応 | ・公的な視点からアドバイスを受けられる |
ここからは、おすすめの事業承継ファンド3選をご紹介します。
各ファンドの特徴を解説していきますので、事業承継ファンドの利用を検討している事業者は参考にしてください。
日本投資ファンド
「日本投資ファンド」は、2018年1月に日本政策投資銀行と日本M&Aセンターが共同で設立した事業承継ファンドです。
日本投資ファンドは投資先企業の成長を第一に考えており、部品製造業やリペアサービス業・菓子製造業などの様々な業種・業界での経営再建実績があります。
日本M&Aセンターをはじめとして、地方銀行や日本政策投資銀行と連携した支援を行ってくれるため、経営再建のためのノウハウや融資力・資金調達力も豊富です。
利用申し込み時に出資の可否について審査が行われますが、審査基準が比較的やさしいと言われており、中小企業でも支援を受けることができます。
SBI地域事業承継ファンド
「SBI地域事業承継ファンド」は、SBIグループの子会社が設立した事業承継ファンドです。後継者不在などの理由で廃業せざるを得ない地域の中堅・中小企業を投資対象にしています。
支援実績数はまだ少ないですが、SBIグループの高い資金調達力やノウハウが活用できるため、力強いサポートを受けることができます。
中小機構ファンド事業部
「中小機構ファンド事業部」は、独立行政法人である「中小企業基盤整備機構」が中心となって設立した事業承継ファンドです。
ベンチャー企業や中小企業の新事業展開支援などを行っており、無料で専門家への経営相談や有益な情報提供を受けることもできます。
まとめ
事業承継ファンドを利用することで、資金調達だけでなく後継者探しのサポートや業績改善に向けた経営相談などの支援を受けられます。
後継者に事業を引き継ぐ以外にも多くのメリットがあるため、後継者問題で悩みを抱えている企業は事業承継ファンドの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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(編集:創業手帳編集部)