事業承継は法律などを把握しておくことが重要!
事業承継は様々な課題を解決しながら進めていく必要がありますが、事業承継の成功率を高めるためには法律に関する勉強を行っておくのが好ましいでしょう。
現在は経営承継円滑化法の法律が改正されており、より中小企業の経営者が事業承継を行いやすいように特例措置も設けられています。
今回は、事業承継の際に知っておくべきポイントやおすすめの相談先などの解説をしていきます。
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目次
なぜ法律も勉強しておくことがいいのか
・後継者、相続人によるトラブル回避
・経営不振に陥る可能性がある
主に上記の2つが、事業承継に関する法律を勉強しておくべき理由です。
まずはそれぞれの理由について解説をしていきますので、事業承継時の法律について気になっている人はぜひ参考にしてみてください。
後継者・相続人によるトラブル回避
事業承継は順調にいけばあまり問題がないですが、すべての企業が事業承継に成功するというわけではありません。特に事業承継では、相続人とのトラブルによって揉める企業も多いです。
後継者や相続人とトラブルが発生してしまうと、事業承継後の経営が安定しないとともに、従業員に不安を与えることになります。
あらかじめ法律をしっかりと勉強して事前に対応しておくことによって、トラブルを回避できるようになるでしょう。
経営不振に陥る可能性がある
さらも事業承継に関する法律を勉強しておくことで、経営不振に陥る可能性を防ぎやすくなります。
前述でも触れたように後継者や相続人とトラブルに発展してしまうこともあり、トラブルに対応している間に経営が不安定になって、倒産・解散してしまう企業も少なくありません。
法律を勉強しておくことでトラブルを未然に防げるとともに、事業承継時に役立つ税制の利用や金融支援を受けやすくなります。
もちろん経営者や後継者が勉強する範囲は専門家レベルではなく、事業承継に関する基礎知識を学ぶ程度で大丈夫です。
事業承継時に知っておくべき「経営承継円滑化法」とは?
事業承継時に関する法律の中でも、多くの経営者・後継者が勉強しておきたいのが「経営承継円滑化法」です。
経営承継円滑化法は2008年に生まれた法律です。中小企業を対象とした経営承継を円滑に進めるための支援策の法律として成立しました。
主に相続時の遺産分割や資金需要・税負担に関する問題などに関しての法律・支援策が講じられており、多くの中小企業の事業承継をサポートします。
相続税や贈与税などの税金の支払いに対する猶予期間の設定や免除を行ってくれる「事業承継税制」、分散した自社株式の買取りや相続税の支払いのための資金調達を支援する「金融支援制度」、遺留分特例制度の対象を親族外へ拡充する特例などが具体的な内容です。
「経営承継円滑化法」の法律・規則の改正が行われた背景
2008年に生まれた経営承継円滑化法ですが、法律が誕生してから10年後の2018年には法律・規則の改正が行われました。
なぜ法律・規則の改正が行われたのかという理由に関しては、2025年問題が加速しているという点や、法律を作ったものの利用する経営者が少ないという点が背景として考えられいます。
中でも国内全体の問題となっているのが2025年問題です。
2025年問題とは、2025年になると日本の労働生産性が著しく減少するとともに、中小企業の多くが廃業し、雇用の減少が考えられる問題を指します。
なぜ2025年問題が起きるのかというと、2025年には団塊の世代が70歳を迎えるため、多くの中小企業の経営者が引退を考えるタイミングになるためです。
帝国データバンクの調査結果によると、245万人の中小企業の経営者のうち、半数ほどの127万人が後継者未定状態となっています。後継者が未定の場合は解散・廃業を視野に入れる必要があるため、労働生産性の低下や雇用の減少につながりやすいのです。
このような労働生産性の低下や雇用の減少を防ぐため、事業承継を円滑に行えるように法律や規則の改正が行われました。
法律・条文・施行規則の改正を経た経営承継円滑化法の知っておきたいポイント
・事業承継税制の改正
・遺留分に関する民法の特例
・金融支援制度
法律や条文・施行規則の改正が行われた経営承継円滑化法ですが、改正が行われたポイントを知っておくことで税制や支援を活用しやすくなります。
続いては、どのような点が改正されたのか解説をしていきますので、事業承継を考えている人は確認していきましょう。
事業承継税制の改正
多くの経営者・後継者が意識するべきポイントが、事業承継税制に関する改正です。
事業承継税制とは、記事内でも触れているように相続税や贈与税に対する支払いが発生した場合、猶予期間の設定や免除をしてくれる制度になります。
改正が行われたというよりも、事業承継税制はどちらかというと特例措置になり、2027年12月31日までの期限が付いています。
今までは相続税の猶予割合も2/3に対する80%の猶予が行われていましたが、特例措置によって相続税の100%に対して猶予期間の設定が可能になりました。
最大3名までの後継者への承継も可能になったため、対象企業が広がり、多くの中小企業が利用しやすくなりました。
【改正前と改正後の違い】
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
相続・贈与を行う者 | 先代経営者のみ | 複数の株主でも可能 |
相続税の猶予割合 | 8割 | 10割 |
株式 | 発行済議決権株式総数の2/3 | すべての株式 |
後継者 | 1人 | 最大3人まで |
相続時精算課税 | 推定相続人等後継者のみ | 推定相続人等以外も適用可 |
遺留分に関する民法の特例
経営承継円滑化法が利用されなかった課題として大きかったのが、遺留分に関する問題です。
多くの人が勘違いしがちなポイントですが、遺書で「後継者に株式の100%を託す」と記載されていても適用されない場合があるので注意しましょう。
相続人が後継者のみの場合は揉める心配がありませんが、法定相続人が複数人いる場合、法定相続人ごとに最低限相続できる割合が民法の規定で定められています。
遺書に記載されていたとしても民法の規定が定められているため、法定相続人が遺留分を主張することによって、株式が分散しやすくなるのです。
このような事態を防ぐため、相続人全員の同意を条件として遺留分ルールの適用を排除することを認めよう改正されました。
金融支援制度
金融支援制度は、都道府県知事の認定を条件に融資などの金融支援を受けられるように定められた制度です。
分散した自社株式の買取りや相続税の支払いなどのため資金調達を支援する制度でもあり、近年では多くの銀行が事業承継専用融資枠・ローンの設定を行っています。
納税資金や株式取得資金に困っている後継者は、銀行にも相談してみるようにしましょう。
事業承継の法律に関するおすすめの相談先
・日本弁護士連合会
・弁護士法人 青山法律事務所
・平井綜合法律事務所
・中小企業法律支援センター
上記の4箇所は、事業承継の法律に関して詳しいおすすめの相談先です。
ここからは、それぞれの相談先の特徴について解説をしていきますので、参考にしてください。
日本弁護士連合会
日弁連こと日本弁護士連合会は、日本全国すべての弁護士が登録をしている機関です。
弁護士自治を守るため、弁護士会は自らを律する厳しいルールのもとに活動しており、様々なトラブル解決・トラブル対策に取り組んでいます。
事業承継に関する相談も受けつけており、日本弁護士連合会の公式ホームページでは事業承継時に発生しがちなトラブルのチェックシートが掲載されています。
事業承継トラブルチェックシートも2020年の7月に改訂されており、最新状態での確認ができます。
弁護士法人 青山法律事務所
弁護士法人 青山法律事務所は、新潟県新潟市や岐阜県大垣市にオフィスを構える弁護士事務所です。
事業承継に関する相談を受けつけており、今まで多くの企業に携わってきた知識やノウハウを活かした提案をしてくれます。
法律相談料は30分11,000円と明確化されている上に、事業承継に関しては1件1件オーダーメイドのスキームの提案をしてくれる点もメリットです。
平井綜合法律事務所
平井綜合法律事務所は名古屋市中区に事務所を構えており、多くの法律相談を受けています。
事業承継は1,000社あれば1,000通りあるといわれていますが、実際に平井綜合法律事務所では事業承継対策が不十分な場合に想定されるケースも紹介されているため、どのような課題が発生しやすいのかについて把握できます。
一般的には専門家に相談する際には多額の費用が発生するものの、顧問弁護士制度を活用した提案・進行なども紹介してくれるため、事業承継に関する専門家の相談費用を抑えたいと考えている経営者・後継者にもおすすめです。
事業承継だけでなく、コンプライアンス診断や法律セミナーも開催していますので、法律について知りたい人やコンプライアンス強化を図りたい企業にも向いています。
中小企業法律支援センター
中小企業法律支援センターは、東京弁護士会が運営している支援センターです。
経験豊富なコンシェルジュ弁護士が電話でもヒアリングしてくれるため、「まずは事業承継について知りたい」「会社の現状について相談したい」という人にもおすすめします。
中小企業法律支援センターでは相談だけでなく、事業承継に関する基礎知識などのセミナーも開催しているため、後継者や経営者の情報収集や知識の取得としても役立ちます。
初回面談の30分は無料で対応(30分以降は30分ごとに税込5,500円にて対応)してくれますので、事業承継に関する相談をしたいと考えている人は中小企業法律支援センターをチェックしてみてください。
まとめ
事業承継は様々な法律が作成されていますが、事業承継を促すために随時改正が行われています。
特例措置も多いため、事業承継を考えている場合は特例の活用がおすすめです。
法律を勉強することでトラブル回避もできますので、おすすめの相談先を参考にしながら事業承継に関して向き合ってみてください。
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(編集:創業手帳編集部)