論文でも事業承継に関する課題が多く挙げられている
事業承継には多くの企業が悩みを抱えていますが、論文でも事業承継に関する課題が取り上げられています。
事業承継に関する論文は、熊本学園大学の学商学部特任准教授や明治大学の生徒などが作成していて、論文を読み解くことで多くの企業の悩み・課題や実態の把握が可能です。
論文以外では、帝国データバンクなどによる調査結果でも事業承継に関する実態がわかります。
論文や調査結果から読み解く中小企業の実態や課題・解決方法について解説をしていきます。
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事業承継が問題視されている理由とは?
- 超高齢化に突入する
- 後継者が不在・決まっていない企業が多い
- 後継者が育っていない
事業承継はどのような点が問題視されているのか、論文で指摘されているポイント・理由について解説していきますので参考にしてください。
超高齢化に突入する
多くの人は少子高齢化が進んでいるという言葉は聞いたことがあるものの、具体的にどのくらい進んでいるのかご存じの方は少ないです。
実際に総務省が調べている調査結果では、下記のようになっています。
【年別の高齢者人口や総人口の推移】
総人口 | 65歳以上の高齢者 | 総人口に対する高齢者の割合 | |
---|---|---|---|
2000 | 12693万人 | 2204万人 | 17.4% |
2005 | 12777万人 | 2576万人 | 20.2% |
2010 | 12806万人 | 2948万人 | 23.0% |
2015 | 12709万人 | 3387万人 | 26.6% |
2019 | 12615万人 | 3587万人 | 28.4% |
2020 | 12586万人 | 3617万人 | 28.7% |
2025 | 12254万人 | 3677万人 | 30.0% |
2030 | 11913万人 | 3716万人 | 31.2% |
2040 | 11092万人 | 3921万人 | 35.3% |
2020年以降は推測によるデータですが、2000年から比べると2020年の段階で約10%も高齢者の割合が増えています。
10人に3人は65歳の高齢者となっており、超高齢化社会に対して加速化している状態です。
後継者が不在・決まっていない企業が多い
論文や事業承継に関する調査内容では、2025年問題が現実味を増していると問題視されています。
2025年問題とは、2025年を超えることによって日本の労働生産性や雇用状態が著しく低下することを指します。
2025年には団塊の世代が70歳を超える年代になり、事業承継を視野に入れる経営者が多いです。
しかし、帝国データバンクの調査結果では、2018年の段階で中小企業の245万人中127万人は後継者が未定という悩みを抱えています。
後継者が未定・決まっていないため、廃業や解散を視野に入れている経営者も少なくありません。
事業承継は10年の期間を目安に進めていくため、論文でも日本の労働生産性に対して危惧している声が多いです。
後継者が育っていない
2025年問題・後継者未定問題と関係していますが、後継者が育っていないことも論文では問題視されています。
後継者の育成と同時に事業承継後の従業員や取引先との関係づくりも必要になるため、やることが多くて苦労する企業も多い傾向にあります。
事業承継は3つの方法に分かれる!それぞれの特徴やメリット
- 親族内承継
- 親族外承継
- M&A
事業承継には、3つの方法が存在します。
それぞれ特徴やメリットが異なるため、事業承継を考えている人は参考にしてください。
親族内承継
子どもや親族に経営権や経営者の想い・社風などを託して行く方法ですが、経営者のノウハウを後継者が直に引き継ぎやすいため、社風を変えることなく経営できやすいです。
従業員や取引先からの理解を得やすい上に、後継者を探す必要がなく、早期に後継者育成に取り掛かれるという点がメリットになります。
親族外承継
従業員や外部から後継者を探して承継していく親族外承継は、近年増加傾向にあります。
特に従業員が承継する場合は社風をそのまま引き継ぎやすい上に、業務の流れを把握しているため、人材を活かした経営が可能です。
社内全体のことを把握しており、従業員や取引先の理解も得られるため、スムーズな承継ができる点がメリットです。
M&A
論文やアンケート調査の調査結果でも、M&Aを行っている経営者は増えています。
M&Aは投資家や経営者に買収・合併してもらう方法ですが、新しい風を社内に取り入れやすい点がメリットです。
論文やアンケート調査からみる事業承継の実態
- 後継者未定の割合
- 事業承継で望む方法
- 事業承継で苦労したこと
- 後継者に必要な資質
上記の4つが、事業承継に関する実態となっています。
後継者未定の割合
後継者未定の割合は途中でも触れたように、245万人中127万人が後継者未定と、概ね半分近くの中小企業が悩みを抱えている状態です。
近年では後継者・M&A先探しが行いやすいように、マッチング支援サービスなども登場していますが、適正な後継者を探すためには時間がかかるため、早期に事業承継に取り組むことが必要と論文でも挙げられています。
事業承継で苦労したこと
実際に帝国データバンクが実施した「事業承継を実施した企業が苦労したこと」に関する調査では下記のような結果になっています。
【事業承継を行う上で苦労したこと(複数回答あり) 対象:3,719社】
% | |
---|---|
後継者の育成 | 48.3 |
相続税や贈与税等の税金対策 | 31.7 |
自社株などの資産の取り扱い | 30.5 |
後継者の決定・選定 | 28.2 |
後継者への権限の移譲 | 26.4 |
従業員の理解を得る | 25.5 |
将来性や魅力の向上 | 21.8 |
事業承継を行う上で必要な情報収集や知識の取得 | 20.4 |
経営者の個人保証や担保外し | 16.8 |
金融機関の理解 | 16.3 |
※参照:帝国データバンクによるアンケート調査
事業承継を実施した企業の約半分近くが、後継者の育成に苦労したと回答しているのです。
後継者の育成には、専用のスクールやセミナーも開催されているため、活用するのもおすすめです。
後継者に必要な資質
論文やアンケートの調査結果で他にも問題視されているのが、後継者の資質です。
会社を運営するためにはリーダーシップなどが必要ですが、親族や子ども・長年勤める従業員などが承継したからといってリーダーシップが必ずあるというわけではありません。
会社を運営するためには、経営テクニカルや戦略的思考能力・責任を担うマネジメント力・厳しい試練を乗り越えていける知識と知恵に加え自立した判断・行動力が必須です。
どの資質も経営をする上では欠けてはならないポイントですが、事業承継に焦ってしまい、資質がない後継者の選定・育っていない状態で承継を行って倒産・解散に陥ってしまう企業も少なくありません。
対策をしておくべき事業承継時の課題と解決方法
- 後継者・M&A先の選定
- 後継者の育成
- 節税対策
- 前経営者の関与問題
上記の4つは事業承継を実施するために、対策を練っておくべきポイントとして論文でも挙げられています。
それぞれの解決方法と合わせて解説をしていきますので、参考にしてください。
後継者・M&A先の選定
後継者やM&A先の選定は、なるべく時間をかけて行うようにしましょう。
前述でも触れていますが、後継者は会社を運営するため、資質がある人物の選定が必須です。
マッチング支援サービスを利用することで、昔と比べるとかなり早く後継者探しやM&A先探しが可能ですが、焦らずに時間をかけて適正者を選ぶようにしてください。
後継者の育成
後継者育成を行う場合は、後継者育成スクールやセミナーの参加がおすすめです。
近年では後継者育成スクールが増加しており、マネジメント戦略や人事戦略・事業承継の計画策定方法など教わることができます。
後継者育成に苦労したと感じている企業は多いですが、スクールやセミナーによって負担を大きく軽減することが可能です。
節税対策
論文やアンケート調査でも挙がっていますが、節税対策にも苦労をした経営者は多いです。
節税対策でも相続税や贈与税など、それぞれの支払いに合わせた対策を練る必要があります。
節税対策を行っていく際には、会社や経営者の現状把握や明確化とともに専門家に相談する時間なども作ることが必要なので、早期に対応していくようにしましょう。
前経営者の関与問題
前経営者の関与問題も、論文で問題視されている課題です。
事業承継は後継者に経営権や社風・想いを託しますが、承継後でも影響力を持っている前経営者が少なくありません。
前経営者が影響力を持っていると、社内での混乱を招きやすい上に、従業員や取引先が後継者の信用性・リーダーシップがないように感じ、イメージが悪くなります。
今まで守ってきた会社・事業になるため、気になることも多いですが、前経営者はあまり関与しすぎないように一歩引いた状態で見守るのがよいでしょう。
まとめ
これからの労働生産性を高め、なおかつ維持するには、多くの企業が事業承継を成功させていく必要があります。
論文やアンケート調査では様々な課題が挙げられていますが、一つひとつ課題を解決し対策を練ることで、事業承継の成功率を高めることが可能です。
会社・事業を残していくためにも事業承継には、しっかりと対策を練るようにしましょう。
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(編集:創業手帳編集部)