事業承継は方向性によってメリットや注意点が変わる
会社や事業を残したい場合、事業承継を考える必要があります。
事業承継は、大きく分けて3つの種類・手段が存在し、それぞれのメリットや注意点を把握した上で方向性を決めるのが好ましいです。
事業承継の手段別に分けたメリットや注意点・おすすめの相談先について解説をしていきます。
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目次
事業承継とは?
事業承継とは、会社や事業の経営権だけでなく、社風や経営者の想いを引き継ぐことを指す言葉です。
冒頭でも触れているように事業承継は3種類存在し、子どもや親族に会社や事業を託す「親族内承継」や従業員・外部から後継者を探す「親族外承継・従業員承継」、新しいビジネスを始めようと考えている経営者や投資家に買収・合併してもらう「M&A」があります。
後継者となる従業員や子ども・親族がいたとしても、適正者とは限らないため、親族内承継や親族外承継を考えている場合は、後継候補者の適正もしっかりと確認をすることが必要です。
事業承継が問題視されている背景
多くの経営者が考える事業承継は、今では日本の課題の一つとしても注目されています。
日本は2025年問題が迫っており、2018年の段階で中小企業の経営者245万人中127万人が、後継者未定状態であるというアンケート調査結果が出ています。
数字だけを聞いてもあまり危機感を感じないかもしれませんが、2025年までには団塊の世代が70歳を迎え、現役を引退する人が多いです。
しかし、10年ほどの期間を目安にして進める必要がある事業承継に対し、中小企業の半分近くがまだ後継者が決まっていない状態なのです。
後継者がいないと当然経営ができなくなるため、解散か廃業を視野に入れるしかありません。
2025年までには中小企業の多くが廃業・解散が行われ、日本の労働生産性や雇用が著しく減少するのではないかと危惧されています。
多くの中小企業が解散・廃業しないために、円滑な事業承継が行えるような税制や補助金も登場しています。
親族内承継のメリットや注意点
事業承継の中で多くの人がイメージするのが、子どもや親族に承継していく「親族内承継」です。
親族内承継のメリットや注意点について解説をしていきますので、参考にしてください。
【種類①親族内承継のメリット&注意点】
メリット | 注意点 |
---|---|
・経営者からノウハウを直で引継ぎやすい ・経営についての相談がスムーズにできる ・従業員や取引先の理解を得やすい ・早期に後継者育成に取り掛かれる |
・法定相続人に対するフォローが必須 ・経験不足から経営不安に陥ることも ・資質や意欲が不足している可能性がある |
メリット
【親族内承継のメリット】
- 経営者からノウハウを直で引継ぎやすい
- 経営についての相談がスムーズにできる
- 従業員や取引先の理解を得やすい
- 早期に後継者育成に取り掛かれる
親族内承継は多くのメリットが存在しますが、特に魅力に感じやすいのが「後継者育成にすぐ取り掛かりやすい」「従業員・取引先の理解を得やすい」という点です。
後継者がいても経営経験が無い場合には、人事戦略や経営戦略・マーケティング戦略などを学ぶ必要があります。
実際に帝国データバンクによる調査結果では、事業承継が済んだ企業3,719に対して「事業承継で苦労したこと」についてアンケートを取ったところ、1位は55.4%の「後継者育成に苦労した」となっています。
経営スキルはすぐに身につかないため後継者が決まっていないと育成にもとりかかることができません。
親族内継承だと、育成にもすぐとりかかることが可能なので大きなメリットとなっています。
注意点
【親族内承継の注意点】
- 法定相続人に対するフォローが必須
- 経験不足から経営不安に陥ることも
- 資質や意欲が不足している可能性がある
経営者によっては会社・事業は子どもが引き継ぐものと考える人も多く、意欲や資質がなかったとしてもエスカレーター式で承継される場合があります。
しかし、意欲や資質に問題がある後継者だと社内でも混乱を招きやすい上に、経営が安定しません。
また、親族内承継でも後継者以外に法定相続人がいる場合は、後継者以外の相続人に対しても徹底したフォローを行いましょう。
事業承継に失敗した企業では、相続人に対してのフォローが十分ではなく、承継後に後継者と相続人の間でもめ事が起き、経営に集中できなかったことで倒産・解散をしている企業もあります。
親族外承継のメリットや注意点
親族外承継は従業員や外部から後継者を探し、会社や事業を承継していく種類・手段で、近年では多くの企業が実施しています。
【種類②親族外承継のメリット&注意点】
メリット | 注意点 |
---|---|
・幅広い候補者から後継者を探せる ・業務内容・従業員の能力を分かっている ・優秀な人材を後継者にできる場合がある |
・強い意志が求められる ・自社株を移行する場合、資金が必要 ・個人債務保証を後継者に簡単に引継げない |
メリット
- 幅広い候補者から後継者を探せる
- 業務内容・従業員のスキルを分かっている
- 優秀な人材を後継者にできる場合がある
親族外承継の大きなメリットは、幅広い候補者の中から後継者を選べるという点です。
親族内承継だと親族か子どもに限られてしまうため、資質がない・意欲がない人物が後継者になってしまう可能性がありますが、親族外承継だと従業員の中や社外での適正者を探すことができるため、優秀な人物を選ぶこともできます。
さらに、従業員が後継者になった場合では、社風や業務内容・従業員のそれぞれの能力も把握しているため、会社の全体像を理解し従業員や取引先との関係構築もスムーズ行えるでしょう。
注意点
【親族外承継の注意点】
- 強い意志が求められる
- 自社株を移行する場合、資金が必要
- 個人債務保証を後継者に簡単に引継げない
親族外承継では自社株を継がせる場合に、後継者に株を取得するための資金が必要です。
資金調達には多くの人が課題に感じ、悩みを抱える人も少なくありません。
経営者が取引のある金融機関に相談をし、話し合いを行った上で資金調達をしましょう。
M&Aのメリットや注意点
M&Aは事業承継に関する種類の中でも、一番利用されている手法・種類になります。
M&Aのメリットや注意点を解説していきますので、他の種類と合わせて参考にしてください。
【種類③M&Aのメリット&注意点】
メリット | 注意点 |
---|---|
・外部の第三者に事業を引き継いでもらえる ・従業員の雇用を守ることが可能 |
・市場価値が低いと買い手が見つかりにくい |
メリット
【M&Aのメリット】
- 外部の第三者に事業を引き継いでもらえる
- 従業員の雇用を守ることが可能
- 売却益を得ることができる
従業員の雇用を守り売却益を得ることができるというのが、M&Aのメリットです。
後継者がどうしても見つからない場合に利用されることが多いですが、経営者・従業員・取引先のすべてに良い選択となる場合があります。
注意点
【M&Aの注意点】
- 市場価値が低いと買い手が見つかりにくい
- 経営の継続性は保証されない
M&Aは、希望する条件下での買い手を見つけるためには時間がかかります。
また、事業・経営の継続性は保証されないということに注意してください。
会社・事業を売却してしまうことになるため、経営権は第三者に方向性ごと託されます。
前経営者の想いを必ず引き継いでくれるという保証はないため、どうしても守りたいスタイルがある事業の場合はやや不向きです。
事業承継に関する相談時に頼りになる!おすすめの相談先
- M&A総合研究所
- 事業承継センター
- OAGコンサルティング
- TOMAコンサルタンツグループ
- 税理士法人 山田&パートナーズ
上記の5箇所は、事業承継に関して頼りになるおすすめの相談先です。
それぞれの相談先の特徴について解説をしていきますので、事業承継の種類ごとのメリットや注意点と合わせて参考にしてください。
M&A総合研究所
M&A総合研究所は事業承継・M&Aの仲介会社で、着手金なしの完全成功報酬制の仲介会社として人気があります。
後継者・M&A先探しでは手厚い支援を受けることができますし、博識な担当者が丁寧に情報を教えてくれるため、知識も身につけられるでしょう。
M&A総合研究所はWebメディアでも情報発信を行っており、初心者でもわかりやすい内容にまとめられているため、情報収集も行いやすいです。
事業承継センター
事業承継センターは、事業承継に関する専門資格「事業承継士」の資格を持つスペシャリストを育成している専門機関です。
また、中小企業に対してのコンサルティングも行っており、金融機関や公的機関など幅広いネットワークを駆使した提案を行ってくれます。
事業承継に関するセミナーも多数開催されているため、後継者や経営者が知識を身につけたい場合にもおすすめです。
OAGコンサルティング
OAGコンサルティングは、事業承継やM&Aのコンサルティングに長けているおすすめ会社です。
事業承継は内容が難しいため、専門家に頼る必要がありますが、OAGコンサルティングは、多くの企業と関わってきたノウハウや経験を活かした提案・進行を行ってくれるため、初めての人でも挑戦しやすいです。
TOMAコンサルタンツグループ
TOMAコンサルタンツグループは、税理士だけでなく、行政書士や公認会計士・司法書士など、グループ内に多くの専門家が集う会社です。
あらゆる専門家のノウハウやネットワークを活かした事業承継の提案を行ってくれるため、どこに相談したらいいか分からないという経営者に向いています。
オーダーメイドでの事業承継対策の提案と実施を行っており、企業に合った事業承継を進めてくれます。
税理士法人 山田&パートナーズ
税理士法人 山田&パートナーズは、税理士法人の中でも珍しい事業承継とM&Aコンサルティングを行っています。
資産税にも強く、事業承継に発生する相続税や贈与税の対策・事業承継のための計画策定まで丁寧に提案してくれます。
M&Aコンサルティングに関しても、税務・財務・法務の知識を駆使してサポートしてくれるため、心強い相談先です。
まとめ
事業承継は「親族内承継」「親族外承継」「M&A」の3種類存在し、それぞれのメリットや注意点がありました。
一番大切なのは「どのように事業・会社を残していきたいか」で、その方向性によって対策などが変わります。
会社の現状や明確化を行い、きちんと方向性を決めて挑むようにしましょう。
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(編集:創業手帳編集部)