事業承継をスタートする前に計画書を作成しよう!
事業承継には、経営者の家族が会社を引き継ぐ親族内承継や、従業員が会社を引き継ぐ親族外承継などがあります。
企業の経営者の中には事業承継の知識に自信がない方も多く、やみくもに進めると失敗する恐れがあります。
事業承継を成功させるためには、事業承継計画書の作成が欠かせません。
そこで今回は、事業承継計画書の内容や作成することで得られるメリットなどを解説していきます。
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目次
事業承継計画書とは?
事業承継時には、後継者の選定以外にも相続税や贈与税などの税金対策や、相続トラブルへの対応などの様々な課題に対応する必要があります。
そこで、事業承継の課題点を視覚化してスケジュールを円滑に進める際に役立つのが「事業承継計画書」です。
事業承継計画書を作成することで得られる5つのメリット
・経営状況の把握や課題が明確化できる
・専門家に相談しやすくなる
・事業承継の見通しをつけやすくなる
・事業承継に伴うリスクを精査できる
・株主などへの状況説明にも役立つ
事業承継計画書を作成することで得られるメリットは、上記の5つです。
以降では、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
経営状況の把握や課題が明確化できる
事業承継計画書を作成することによって、経営状況を的確に把握して取り組むべき課題を明確化できます。
事業承継を円滑に進めるためには、後継者の育成や承継時に発生する税金対策などの様々な課題を解決することが不可欠です。
後継者の育成のみを重視して税金対策をおろそかにすると、承継時に多額の税金を支払って会社の財務状況が悪化する恐れがあります。
こうした課題に対策を講じるためにも、計画書を作成してスケジュールを視覚化することが大切です。
専門家に相談しやすくなる
事業承継計画書を作成すると会社の現況や課題が明確になるので、事業承継コンサルタントのような専門家に相談する時に要点を伝えやすくなります。
専門家にも得意分野があるため、課題を明確化していると自社に適した専門家を見つけやすくなります。
事業承継の見通しをつけやすくなる
事業承継計画書を作成することで、後継者に事業を引き継ぐまでのスケジュールや見通しをつけやすくなります。
さらに、承継後に新しいビジネスを始める場合は、事業承継計画書を作成しておくと新事業承継税制が利用できるようになります。
事業承継に伴うリスクを精査できる
事業承継計画書を作成しただけで、すべての工程が計画通りに進むわけではありません。
計画書を作成して様々なリスク精査を行うことによって、事業承継時に生じる数々の問題を回避できます。
株主などへの状況説明にも役立つ
事業承継を進めるためには、専門家に相談するだけでなく、企業の株主にも計画を説明して承認を得る必要があります。
後継者候補の情報や明確なスケジュールを示した事業承継計画書があれば、株主への説明がスムーズに進められます。
事業承継にかかる期間は?
事業承継計画書を作成するにあたり、どの程度の期間を目安にスケジュールを立てるべきか悩んでいる経営者も多いのではないでしょうか。
事業承継に必要な期間は企業の状況によっても異なりますが、5年から10年単位で作成するのが一般的です。
税金対策などは1年から2年程度で完了することができますが、後継者の育成には年数がかかるため余裕を持ってスケジュールを設定する企業が多いです。
事業承継計画書の作成に必要な準備
・会社の現状把握と方向性の決定
・後継者候補の選定
・事業承継に関する知識の習得
・事業承継時に発生する税金の確認
ここからは、事業承継計画書の作成に必要な準備について解説します。
会社の現状把握と方向性の決定
事業承継計画書を作成する前に、会社の現状把握や承継の方向性を決定する必要があります。
事業承継と一言でいっても、経営者の家族に会社を引き継ぐ「親族内承継」もあれば、従業員に引き継ぐ「親族外承継」、他の企業や投資家に買収してもらう「M&Aによる承継」などがあります。
承継の形態によって準備や解決すべき課題が異なるため、良く検討して方向性を決めるようにしましょう。
後継者候補の選定
事業承継の方向性を決める上で重要になるのが、後継者候補の選定です。
後継者に経営や実務の経験がない場合は、研修などを行って育成する必要があります。
実務を十分に積んできた従業員に承継する場合でも、経営に関する知識や実務の進め方を教えなければいけません。
後継者の育成にも様々な課題が発生するため、事業承継計画書を作成する時はどのような後継者がふさわしいか慎重に検討しましょう。
事業承継に関する知識の習得
より良い事業承継計画書を作成するためには、事業承継に関する知識を身につけることも必要です。
専門家やコンサルタントに相談すれば計画書を作成することができますが、基礎的な知識を習得しておくと計画書に経営者の意向を反映しやすくなります。
事業承継時に発生する税金の確認
事業承継時に発生する税金の確認も大切です。
事業承継時には税金の支払い猶予が適用されるため、「事業承継税制」を勉強することで節税対策ができます。
事業承継税制の特例の適用には様々な条件を満たす必要がありますが、下記に一部の条件をまとめていますので、参考にしてください。
【先代経営者・後継者の条件】
先代経営者の条件 | 後継者の条件 |
---|---|
・会社の代表取締役を経験済み ・贈与or相続の直前に会社の筆頭株主 ・贈与時において代表取締役ではないこと |
・贈与or相続によって会社の筆頭株主になること ・贈与を受ける時に会社の代表取締役になっていること ・贈与前に3年間継続してその会社の役員であること |
事業承継計画書の作り方
・STEP.1:事業承継計画書に記載する項目の作成
・STEP.2:現状の洗い出し
・STEP.3:事業承継の方向性を決定する
・STEP.4:事業承継コンサルタントの選定
・STEP.5:短期・中期・長期別に行動目標を記載
・STEP.6:取引先への周知予定や後継者の研修予定を記載
・STEP.7:計画書に沿って行動
事業承継計画書の作成手順は、上記のとおりです。
中小企業庁が策定した「事業承継ガイドライン」にも解説が記載されていますので、あわせてチェックしてみてください。
STEP.1:事業承継計画書に記載する項目の作成
まずは、事業承継計画書に記載する項目を作成します。
計画書に記載すべき項目は下記のとおりです。
・事業承継前から承継後のタイムスケジュール
・タイムスケジュールに合わせた経営者と後継者の年齢
・売上高・経営利益
・従業員の人数
・後継者・経営者の役職の変わり方
・取引先や従業員・家族などの関係者に対する理解
・株式・財産の分配・持ち株
・後継者の教育スケジュール
・従業員や取引先への周知スケジュール
中小企業庁の事業承継ガイドラインにひな型が添付されているので、参考にしながら作成を行ってみてください。
STEP.2:現状の洗い出し
項目を作成した後は、現経営者や後継者に関する情報の洗い出しを行いましょう。
現経営者や後継者の情報を整理することによって「現経営者や後継者が何才になるまでに、どのような準備を進めておけば良いか」などの全体像が把握できます。
STEP.3:事業承継の方向性を決定する
次は、事業承継の方向性を決定しましょう。
事業承継には、「親族内承継」・「親族外承継」・「M&A」といった承継方法があります。
事業承継の方向性だけでなく、「現在の資産・売上高」「主要な事業」「将来的な展開を検討している事業」などをまとめておくと、将来の方向性が見えやすくなります。
事業承継後に新しい事業を始めたいと考えている場合は、新事業に関する計画書も作成しておくと良いでしょう。
政府は事業承継後に新事業を始める企業にも補助金を出しており、採択されれば下記のような補助金を受けることができます。
【後継者承認支援型】
対象 | 事業転換 | 補助率 | 補助上限額 |
---|---|---|---|
個人事業主を含む小規模事業者 | 無し | 2/3 | 200万円 |
上記以外の人 | 無し | 1/2 | 150万円 |
個人事業主を含む小規模事業者 | 有り | 2/3 | 500万円 |
上記以外の人 | 有り | 1/2 | 375万円 |
【事業再編・事業統合支援型(M&A)】
対象 | 事業転換 | 補助率 | 補助上限額 | 対象となる取り組み |
---|---|---|---|---|
採択上位者 | 無し | 2/3 | 600万円 | ・合併 ・会社分割 ・事業譲渡 ・株式交換 ・株式移転 ・M&Aの取り組みなど |
上記以外の人 | 無し | 1/2 | 450万円 | 同上 |
採択上位者 | 有り | 2/3 | 1,200万円 | 同上 |
上記以外の人 | 有り | 1/2 | 900万円 | 同上 |
STEP.4:事業承継コンサルタントの選定
事業承継計画書には、相談を予定している事業承継コンサルタントの候補も記載しましょう。
コンサルタントによって得意分野が異なるため、候補は複数記載しておくのが好ましいです。
【記載例】
事業承継の方向性 | ・M&A or 親族内承継 or 親族外承継 |
---|---|
事業承継目標期間 | ・目安の期間を記載 |
相談する機関候補 | ・〇〇総合研究所 ・△△事業承継総合センター ・株式会社□□コンサルティング ・税理士法人◇◇&パートナーズ ・▽▽法律事務所など |
STEP.5:短期・中期・長期別に行動目標を記載
次は、短期・中期・長期別の行動目標を詳しく記載しましょう。行動目標を記載することによって、進捗状況が把握しやすくなります。
事業承継には5年から10年程度の歳月をかかるため、大まかな道筋を作っておくようにしましょう。
STEP.6:取引先への周知予定や後継者の研修予定を記載
行動目標に続いて、取引先への周知予定や後継者の研修予定も記載しておきましょう
株の分配スケジュールも作成しておくと、分配時のトラブルを防ぎやすくなります。
STEP.7:計画書に沿って行動
事業承継計画書が完成した後は、計画書に沿って行動を進めていきましょう。
税制上の優遇措置や補助金の適用を受けるためには事業承継計画書を提出しなければならないため、計画に変更が生じた時は計画書を随時更新する必要があります。
何度も変更が生じると作業量が膨大に膨らんでしまうので、無理のない計画を立てて事業承継を進めていくようにしましょう。
まとめ
事業承継を何度も経験する人はあまりいないため、どのように計画書を作成したら良いかわからないという経営者は少なくありません。
コンサルティングを利用すれば事業承継計画書の作成支援も行ってくれるため、自身で作成できない場合は専門のコンサルティングに相談するのがおすすめです。
入念に計画を立てることでスムーズに事業承継を進められるようになるので、10年先を見据えて計画を練るようにしましょう。
起業家に有益な情報を徹底してお届けする「創業手帳」から、日本初の事業承継に特化したガイドブック「事業承継手帳(無料)」 が創刊されました!事業承継を検討する創業者の方、これから新社長になる方、事業承継に関わる士業の方などに有益なノウハウや最新情報をお届けしています。あわせてご活用ください。
(編集:創業手帳編集部)