事業譲渡で重要な契約書
高齢に差し掛かり生前のうちに事業承継を行いたいという、中小企業の経営者が増えてきています。
事業承継を実施するためには「事業譲渡契約書」を作成する必要がありますが、どのように作成したら良いのかわからない方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、事業承継にはなくてはならない契約書の作成方法や注意点について徹底的に解説していきます。
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なぜ事業譲渡契約書が必要?
- 事業譲渡後のトラブル防止
- 会社法21条の認知・了承を得るため
事業承継において契約書が必要な理由は、上記の2点です。
事業譲渡後のトラブル防止
事業譲渡後にトラブルにならないためには、以下のような対策を講じましょう。
- 未払債務についての支払請求の有無
- 損害賠償責任請求の発生
未払いの債務などは、事業承継で譲渡されない場合もあるので注意してください。
譲渡されないということは、事業承継した後も譲渡側が負担することになります。
もし未払の債務があった場合には、負担するがどちらなのかを譲渡契約書に明確に記載しておきましょう。
会社法21条の認知・了承を得る
事業承継においては、譲渡先に「会社法21条」の認知・了承を得る必要があります。
会社法21は、競業避止義務のことで「事業を譲渡した後に、譲渡した側は同市町村・近隣市町村で同じ事業を20年間は行ってはいけない」と定められています。
ただし、双方の同意が前提となりますが、期間や地域等の変更は可能です。
例えば、譲渡される側がもう少し範囲を広げ、都道府県にしたり期間も最長で30年と決めることもできます。
契約書を作成する方法
- 契約者を記載する
- 目的に関する記載
- 譲渡財産に関して
- 公租公課の負担について
- 事業譲渡による対価
- 従業員の雇用について
- 書類の交付時期について
- 財産の移転時期など
- 譲渡日までの運営に関する記述
- 取引先
- 表明保証について
契約者を記載する
譲渡する側の名(甲)と譲受する側の名(乙)を、事業譲渡契約書の初めに記載します。
目的に関する記載
続いて目的について記載する必要がありますが、何を引き継ぐのかを明らかにしておきます。
譲渡財産に関して
譲渡財産ですが、承継する財産はきっちりと記入しなければなりません。
損害賠償の請求といったトラブルが発生する可能性もあるので、各項目ごとに目録を作るのがおすすめです。
例えば、譲渡する債務・資産、事業についての契約・従業員の雇用といった項目を作成しそれぞれ記載します。
公租公課の負担について
公租公課は、事業税・固定資産税・自動車税などの国に納める税金や、雇用・社会保険保険料などが挙げられます。
譲渡日の前は売り手で譲渡日の後は買い手が負担となり、負担額を日割りで計算して契約書に支払額を記載してください。
また、間違って取引相手が負担するべき金額を支払ってしまう可能性もあるので、自社の負担を少なくするように相手側に清算を求めることができる旨も記載しましょう。
事業譲渡による対価
事業譲渡での対価は、支払う金額と振り込み先の銀行口座を契約書に記入しておきましょう。
一般的には、振込手数料は買い手側が負担することになりますが、認識に相違があるケースもあるので、これらも買い手が振込手数料を支払うという旨、明記しておくことをおすすめします。
従業員の雇用について
会社の買い手が従業員との雇用を継続する際には、雇用契約を再度締結する必要があります。
後のトラブル回避のためにも、譲渡日に雇用契約または解雇を行う旨、事業譲渡契約書にしっかりと記載するようにします。
譲渡側が譲渡の期日までに再雇用についての承認を得るということも記載し、譲渡される側は従業員の未払いの債務である退職金・残業代など、未消化の有給や勤続年数などを引き継ぐかどうかも、それぞれ明記するのを忘れないでください。
書類の交付時期について
必要な書類とは、事業譲渡を承認した取締役会・株主総会の議事録・免責登記の書類・売り手の商業登記簿謄本など、財産移転についての書類です。
財産の移転時期など
財産を移転する時期に関しては、譲渡日または譲渡日から30日までに定めるケースがあります。
財産の移転時期や手続きの範囲も、譲渡先と話合いのもと確定しましょう。
譲渡日までの運営に関する記述
- 今までのように事業を続けていく
- 譲渡対象の財産管理を行う
- 事業の価値を損なわない
業譲渡契約書には、上記の3点についても記述する必要があります。
取引先について
事業承継では、取引先との契約は承継されないので、もし契約を引き継いでもらいたい場合は、事業を譲渡する際に契約を締結した取引先の同意を得る必要があります。
表明保証
表明保証とは、譲渡側と譲渡される側、それぞれに項目が設けます。
契約書の締結日と譲渡日に行う事柄がすべて正しいということを表明し保証することを記載しましょう。
契約書作成の注意点
- 事業譲渡の理由
- 事業譲渡への対価
- 法令上の規定を配慮
- 商号続用時の免責登記
- 従業員への処遇
事業譲渡契約書を作成するにあたって、主に上記のような注意点があります。
契約後に訴訟などのトラブルにならないために、これから説明する注意点を参考にしてください。
事業譲渡の理由
後継者に承継する財産や事業・財産の移転時期・手続きについてを、事業譲渡契約書に記載しておく必要があります。
お互いの利益が損なわれないようにするために、両者で話し合って取り決めされた内容がしっかりと反映されているかどうか確かめましょう。
事業譲渡への対価
事業譲渡での対価で注意しなければならないのは「支払金額の明記」と「財産評価の保証」の2点になります。
事業譲渡契約書には、譲渡する支払額とともに、支払う日や支払い方法・どちらが振込手数料を負担するかを記載しておくとトラブルを防止できます。
法令上の規定を配慮
すべて法律の通りに手続きを行わなければなりません。
取締役会の決議や株主総会を経たり、株式の買い取り請求に応じたりなど、株主への配慮がや公正に取引されることも必要です。
事業承継契約書には、事業譲渡についての手続きをなどや保証条項を明記しておくと、のちに「認識の相違」が起こりにくくなります。
商号続用時の免責登記
買い手が売り手事業の商号を引き継ぐことを商号の続用といいますが、商号の続用を選択すると買い手が売り手の債務を引き継がなければなりません。
譲渡される側が免責登記を望むのであれば、事業譲渡契約書に「免責登記の事項」を追記しておきましょう。
従業員への処遇
従業員の処遇も経営者であれば心配になることでしょう。
譲渡される側にとっても、従業員の豊富な経験や知識をそのまま得ることはプラスです。
ただ、そのためにも譲渡する側は雇用に関する規定、譲渡される側は業務に関して今まで同様協力してもらえるような規定の作成も忘れずにしてください。
まとめ
事業譲渡契約書は、承継後にトラブルを防ぐために譲渡側と譲渡される側が細かい部分までキッチリと話し合って作成することが重要です。
事業譲渡を初めて行う経営者のために契約書の”ひな型”はありますが、少しでも抜けがあるとトラブルの元になってしまうので、不利益が生じないために税理士やM&Aの仲介会社などの専門家に相談しながら契約書を作成するのがおすすめです。
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(編集:創業手帳編集部)