個人事業主の事業承継は可能?

税務署へ開業届けを提出し個人で事業を運営する事業主では、経営者から子供へ、もしくは親族などに会社の事業を継承することを検討している方が多くいます。

法人事業主だけではなく、個人事業主が事業承継を行なって後継者に会社を引き継ぐことは可能です。

そこで今回は、個人事業主の方に向けて、事業承継を行う際の方法や、支払うべき税金・承継の流れについて解説していきます。

起業家に有益な情報を徹底してお届けする「創業手帳」から、日本初の事業承継に特化したガイドブック「事業承継手帳(無料)」 が創刊されました!事業承継を検討する創業者の方、これから新社長になる方、事業承継に関わる士業の方などに有益なノウハウや最新情報をお届けしています。あわせてご活用ください。

個人事業主の事業承継の方法

  • 贈与
  • 相続
  • 売買(M&A)

個人事業主には、商店・青果店・洋服店・クリーニング店・レストランなど、業種は様々ですが、いずれも事業承継を実施する方法には、売買・相続・贈与などがあり、他人へ引き継ぐのか、親族へ引き継ぐのかで、固定資産や借入金などが異なります。

これから、個人事業主の事業承継方法について具体的に説明していきます。

贈与

贈与による事業譲渡は主に生前贈与が主流となっており、個人事業主が子供や親戚などの親族内とM&Aによる他人へ事業を贈与するというケースの2種類です。

親族内事業承継を実行するメリットは、後継者を早急に決定できたり、比較的早い時点で経営者の教育を行うことができる点です。

親族外事業承継であれば、自社のみならず幅広い範囲で候補者を選択できて、経営体制を維持しやすくなるというのがメリットになります。

相続

会社の経営者が死亡して相続する場合に、保持している自社株を資産や財産の一部として次期後継者が引き継ぐことです。

一般的には遺言があれば、どの範囲まで相続するのかを決めることができますが、遺言がない場合は、遺産分割協議などの話し合いで確定することになります。

個人事業者は、「何を・誰に・どのように相続してもらうか」という明確な意思を遺言として残しておくと、残された人たちが困らないで相続によって事業承継を行うことができるでしょう。

売買(M&A)

個人事業主がM&A(売買)で事業承継を行う場合は、一般的に第3者に売買することになります。

その場合、経営者は対価を得ることができますが、事業の規模が小さいと買い手を見つけるのが困難でしょう。

M&A(売買)での事業譲渡は、事業承継マッチングサイトを活用したり、事業承継センターへ相談したりすれば、比較的スムーズに事業譲渡先の企業を見つけることが可能です。

個人事業主が事業承継を行うフロー

  • 後継者を選ぶ
  • 後継者への教育や引継ぎ
  • 現経営者の廃業手続き
  • 後継者の開業手続き
  • 屋号引継の処理
  • 取引先へ連絡および挨拶まわり

これから、どのようにして個人事業主が事業継承を行えば良いのかを、具体的に解説していきます。

後継者選び

まず始めに、個人事業主が後継者選びをするのが重要課題です。

これは親族内だけでなく第三者に事業譲渡する際にも同じです。

今までは経営者の子供や兄弟などの親族に引き継がれることが一般的でしたが、最近では少子高齢化が深刻化しているので、M&Aなどにより社外の人に譲渡されるケースも増えています。

後継者への教育や引継ぎ

会社の後継者が確定したら、続いて個人事業主の会社の事業やノウハウなどを引き継ぐことになります。

しかし、突然会社の全てを一人で任せることは厳しいので、次期経営者に育て上げるための教育をする期間が必要です。

そのため、事業承継を行う際には時間に余裕をもって行うのがおすすめです。

廃業の手続き

個人事業主の廃業手続きは比較的シンプルです。

経営者が廃業届出を提出すると完了となります。

開業の手続き

個人事業主が廃業の手続きを完了したら、続いて次期代表となる後継者が開業の手続きを進行していきます。

開業手続きも廃業手続き同様で、後継者が「個人事業の開業」届出を提出すれば完了です。

届け出の用紙は、国税庁のHPでのダウンロードや、税務署で受け取れます。

開業届けを忘れたとしても罪に問われるわけではありませんが、何かの手続きの際に必要になる場合があるので、1ヶ月以内に提出し、コピーを手元に保管しておくのがおすすめです。

屋号を引継ぎぐための処理

使用していた屋号をそのまま使用するには、引き継ぐ処理が必要になります。

その場合は屋号を引き継ぐということも、開業届に記載するようにしてください。

なお、商号登記をしているケースでは、会社法で定められている競業避止義務により使用できないこともあるので、事前に確認しておくようにしましょう。

取引先などへ連絡する

会社の代表が交代する際には、取引先などへ連絡することが必要不可欠です。

これまで長い付き合いがあるとはいえ、代表交代したとしても問題は発生しないという確証はありません。

挨拶はどんな時でも基本なので、現経営者が後継者を取引先に伴って行くのが良いでしょう。

個人事業主が支払うべき税金

  • 相続税
  • 贈与税
  • 消費税
  • 所得税

個人事業主が事業承継で代表が交代した際には、上記のような様々な税金が発生します。

これから、事業承継で発生する支払うべき税金について具体的に説明していきます。

相続税

相続における事業承継では、会社を相続する時点を基準として評価額が査定され、課税される仕組みになっています。

事業承継での相続税には、あらゆる不確定な要素が含まれており、ケースバイケースで後継者に税金の負担がかかることもあるので注意してください。

贈与税

主に経営者である親から子供へ事業承継が実行される場合には、贈与税がかかります。

事業を買い取るのではなく譲り受けることになりますが、これは買い取るための資産を保有していない場合が多く、「贈与」という形式にするためです。

消費税

消費税は事業承継を、生前贈与あるいは相続として実行するのかで金額が異なってきます

事業を行なっている中で年間の売上高が1,000万円以上あるかどうかで、非課税か課税かが確定されます。

所得税

所得税の計算は、個人が1月1日~12月31日までの1年間で得た「所得金額(収入ー経費)」より「所得控除額」をマイナスした金額です。

所得税については10種類あり、売買(M&A)によって事業承継を行う場合では、譲渡所得になります。

まとめ

個人事業主の事業承継は、法人による事業承継よりは比較的シンプルに手続きを行うことができます。

しかし、届出書に関しては『青色申告承認申請書』の提出期限を過ぎてしまうと、承継した年分について適用されないケースがあったり、消費税の届出書なども複雑で納税額が膨大になったりする場合もあるため注意が必要です。

自分で事業承継を行うことが難しいのであれば、税理士などの専門家に相談したり事業承継マッチングアプリなどを利用することをおすすめします。

起業家に有益な情報を徹底してお届けする「創業手帳」から、日本初の事業承継に特化したガイドブック「事業承継手帳(無料)」 が創刊されました!事業承継を検討する創業者の方、これから新社長になる方、事業承継に関わる士業の方などに有益なノウハウや最新情報をお届けしています。あわせてご活用ください。

関連記事
記事タイトル
記事タイトル

(編集:創業手帳編集部)