事業承継は金融機関に相談するのもあり?

事業承継は多くの経営者の悩みの種となっており、「どこに相談をしたらいいのかわからない」という経営者もいます。

現在、事業承継に特化した専門機関が増加していますが、金融機関に相談することによるメリットもたくさんあります。

当記事では、金融機関に相談した場合はどのようなメリットがあるのか、支援内容や支援例について解説していきますので、事業承継の相談先について迷っている人は参考にしてください。

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金融機関に相談したほうが良い背景

事業承継のことは相談したほうが良いのは、2025年問題が関係しています。

2025年問題は、2025年になると超高齢化社会になり、団塊の世代が70歳を迎えるタイミングになることによって、様々な問題が生まれることを指します。

中でも注目する必要があるのが、中小企業の経営者の多くが引退を考えるタイミングなのにも関わらず、2025年までに後継者が見つかっていなかったり、未定の企業が半分近くもあったりするという点です。

後継者が不在だと、事業を解散するか廃業させる必要があり、大幅に日本の労働生産性が下がると考えられています。国内全体で問題視されており、国が自治体・金融機関・商工会議所とともに事業承継がスムーズに進められるよう、様々な支援に取り組んでいる状態です。

事業承継については金融機関に相談をすることによって、他の公的機関などのネットワークを活用した強力な支援を受けられるでしょう。

事業承継は金融機関に相談したほうが良い5つのメリット

・事業承継後の納税資金のことで相談できる
・後継者/M&A先が見つかる場合がある
・新規事業計画に対する融資相談が可能
・アドバイザーによる相談が可能
・相談料/着手金が必要ない場所も多い

上記の5つが、金融機関に相談したほうが良いメリットとして挙げられます。

ここからは、それぞれのメリットについて解説をしていきますので、金融機関に相談しようと考えている人は参考にしてください。

事業承継後の納税資金について相談できる

金融機関では、納税資金に関する相談が可能です。

事業承継を行うと、相続税や贈与税がかかることがあります。相続税や贈与税に対する税金対策をしっかりできていない場合は多額の税金を支払う必要があり、大きな負担となって経営不振に陥ってしまう企業も少なくありません。

納税するための資金の融資などにも対応してもらえる場合があるため、金融機関に相談する経営者も大勢います。

後継者・M&A先が見つかる場合がある

金融機関に相談をすると、金融機関によっては後継者やM&A先を紹介してくれる場合があります。

前述でも触れているように、自治会・商工会議所・事業承継に関する専門機関が、金融機関と協力をしながら経営者をサポートしています。

そのため、金融機関が自治会・商工会議所・専門機関に、事業承継を考えている経営者の情報を伝え、ネットワークを活用して後継者・M&A先が見つかる可能性が高いのです。後継者探しやM&A先探しに迷っている人にもおすすめといえます。

新規事業計画に対する融資相談が可能

事業承継後に新規事業を計画しているのであれば、その事業に対する融資の相談も可能です。

新規事業を行う場合は、新規事業に伴う設備や人件費など、様々な部分に投資する必要があります。

相続税や贈与税などの税金の支払いができても、新規事業に関する資金に余裕がないという企業も多いでしょう。金融機関への相談は、新規事業計画がある企業にもおすすめです。

アドバイザーによる相談が可能

金融機関によっては、事業承継についての専門的な知識を持つアドバイザーがいます。

資格の中にも金融機関の職員向けの資格「事業承継アドバイザー(BSA)」が存在し、事業承継に関する税制や補助金の活用を中心としたアドバイスを受けることが可能です。

取引経験がある金融機関に、アドバイザーの資格を持っている人がいるかどうか問い合わせて、もし保有者がいれば紹介してもらうと良いでしょう。

相談料・着手金が必要ない場所も多い

事業承継の相談が可能な場所は増えていますが、金融機関の場合は相談料や紹介に関する着手金が必要ない場合がほとんどです。

後継者やM&A先を紹介してもらう場合、サービスの登録をしてから着手金を支払う場合も少なくありません。

事業承継を行う際に必要な費用を、最小限に抑えられるという点もメリットになります。

金融機関の支援内容

・コンサルティングの実施
・事業承継に関するセミナーの実施
・株式承継に対する支援
・M&Aに関する支援

金融機関に相談する場合は、上記の支援内容を受けることが可能です。

続いては、それぞれの支援内容について解説をしていきますので、ぜひ参考にしてみてください。

コンサルティングの実施

金融機関によっては、コンサルティングサービスを実施しているところもあります。

金融機関の専門家が経営者や後継者と一緒に対応してくれるので、事業承継に関する計画の策定や課題の発見・分析もできます。

さらに事業承継に詳しいコンサルタントの紹介してもらえる場合があるので、多くの経営者におすすめです。

【コンサルティング例】
・経営面の事業承継対策
・事業引継ぎのための事業承継計画作成支援
・専門家と連携した知的資産の引継ぎ支援
資産面(自社株式)の事業承継対策
・現オーナー株式の買取対策
・金庫株による自己株式買取対策
・中小企業投資育成会社を活用した自社株式の移転対策
・非上場株式の評価引下げと株式の移転対策
グループ内組織再編
・グループ内組織再編成の実行支援
・持株会社設立による関連会社株式の集約とグループ内経営の効率化支援

事業承継に関するセミナーの実施

多くの金融機関は、事業承継のセミナーを開催しています。

セミナーは「事業承継について理解を深めたい」と考えている経営者や「他の企業の事業承継体験例などを聞きたい」と思っている方には大いに役立つでしょう。参加することでトラブルの対策もできるため、成功率を高めたいと考えている経営者や後継者に人気です。

下記が実際に地方の金融機関によって開催されたセミナーになります。

これからも開催される可能性が高いため、日時や内容などを参考にしてください。

【セミナー例】

銀行 タイトル 日時 開催場所 内容
広島銀行 経験豊富な税理士が語る!事業承継セミナー 2021年5月26日(水)

17時00分 ~ 18時30分

オンライン ・事業承継を取り巻く環境の変化
・必要準備
・おさえておきたいポイント
・準備の仕方
佐賀銀行 経営者・後継者のための事業承継セミナー 2021年1月22日(金)

16時30分 ~ 17時30分

オンライン ・親族内承継のポイント
・従業員承継のポイント
・経営戦略としてのM&A
千葉銀行 贈与税・相続税が猶予される事業承継税制の活用 2020年7月21日(火)

14時00分 ~ 15時00分

オンライン ・昨今の事業承継事情と課題
・事業承継税制の概要と活用法
東日本銀行・横浜銀行 事業承継セミナー 1月29日(火)

14時00分~17時15分

東京都墨田区にある研修センター ・特例事業承継税制の留意点とケーススタディ
・M&Aを活用した後継者問題の解決
・個別相談

 

株式承継に対する支援

金融機関の支援では、他にも株式承継についてのサポートを受けられ、株式が分散してしまうリスクを抑えることができます。

事業承継を行っている企業の中には、後継者予定者に株式が十分に集まらず、経営権が分散して経営不振に陥ってしまった企業もあります。

金融機関に相談をすることによって、他の株主から株式の取得を行うための金融支援・融資を受けることができるため、株式の分散リスクを抑えることが可能です。

M&Aに関する支援

さらに金融機関では、M&Aに関する支援を率先的に行っている場所もあります。

金融機関に相談をすることで、買収希望の企業との仲介役になってくれる場合もあり、「事業を残していきたい」と考えている場合に頼りになります。

金融機関の事業承継支援例

・北陸銀行
・広島銀行
・きらぼし銀行
・日本政策金融公庫

次は実際に金融機関がどういった事業承継のサポートをしているのか、解説をしていきます。

北陸銀行

北陸銀行では、事業承継を行おうと考えている経営者・後継者に向けた応援ローンを行っています。

株式の分散を避けるため、株主から株式の取得を行う際の資金として利用することが可能です。

担保や保証人も必要ないので、比較的利用しやすいという点から多くの後継者が利用しています。

事業承継に関する専門家への支払いにも活用できるため、事業承継を円滑に進めたいと考えている経営者にもおすすめです。

【事業承継応援ローン】

利用可能な人物 借入対象の自社株を発行している法人の後継者
利用可能用途 ・自社株取得に必要な株式取得資金/納税資金
・自社株取得に伴い税理士等専門家に支払いする諸費用
融資金額 300万円以上5,000万円以内
利用期間 10年以内(据置期間最長6ヶ月)
担保・保証人 不要

広島銀行

広島銀行

広島銀行も多くの経営者と関りがあり、事業承継に関する様々なサポートを行っています。

広島銀行の事業承継サポートローンでは、事業承継時に必要になる納税資金に使うことも可能です。

融資可能金額も1,000万円から1億円までと多くの企業が利用しやすい上に、利用期間も最長15年になるため、経営に負担をかけにくいという点がメリットになります。

ただし、担保や保証人に関しては広島銀行の審査が必要になるため、必ずしも保証人や担保が必要ないというわけではありません。

株式取得資金や納税資金の調達に対して考えている経営者は広島銀行も検討してみてください。

【ひろぎん事業承継サポートローン】

利用可能な人物 広島銀行が事業承継計画を策定支援
または計画内容の検証を行った法人および個人
利用可能用途 ・事業承継に必要な株式取得資金/納税資金
融資金額 1,000万円以上1億円以内
利用期間 15年以内
担保・保証人 審査あり

きらぼし銀行

きらぼし

きらぼし銀行も多くの経営者が利用しており、利用用途が幅広いという点が大きな魅力になります。

個人事業主の人でも事業承継を行いたい場合に利用がしやすく、融資金額も1,000万円から5億円までとかなり範囲が広いです。

さらにきらぼし銀行では事業承継に関する相談は無料で対応してくれるとともに、きらぼし銀行のコンサルタントが買収ニーズや売却ニーズを拾って、他のメガバンク・証券会社・地方銀行・コンサル会社と情報交換を行い、M&A先が見つけてくれる場合もあります。

資金調達以外にもM&A先探しや後継者探しでも頼りになります。

【事業承継・相続対策サポートローン】

利用可能な人物 きらぼし銀行が作成した「提案書」
および「外部専門家による意見書」を開示できる法人・個人事業主
利用可能用途 ・事業承継に必要な株式取得資金/納税資金
・その他事業承継に必要な資金
融資金額 1,000万円以上5億円以内
利用期間 15年以内(据置期間最長5年)
担保・保証人 要相談

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫

地方の金融機関だけでなく、政府系金融機関の「日本政策金融公庫」でも事業承継に関する支援に取り組んでいます。

日本政策金融公庫では、事業承継・集約・活性化支援資金が資金調達支援に該当します。

他の金融機関と比べると、条件がかなり難しい内容になっていますが、審査・条件に当てはまると地方の金融機関と比べて好待遇での資金調達が可能です。

条件は細かく分けられており、利用可能な人物の条件に対して税率も変わってきますので、詳しい内容を聞きたい場合は日本公庫各支店の中小企業事業の窓口にて相談をしてみるようにしましょう。

【事業承継・集約・活性化支援資金】

利用可能な人物

※1~5までに当てはまる法人・個人

【条件1】
中期的な事業承継を計画し、
現経営者が後継者と共に事業承継計画を策定している人
【条件2】
安定的な経営権の確保等により、
事業の承継・集約を行う人
【条件3】
事業の承継・集約を契機に、
事業転換や新たなビジネスに挑戦しようと考えている人
【条件4】
中小企業経営承継円滑化法に基づき
認定を受けた中小企業者の代表者、
認定を受けた個人である中小企業者
または認定を受けた事業を営んでいない個人
【条件5】
事業承継に際して経営者個人保証の免除等を
取引金融機関に申し入れたことを契機に
取引金融機関からの資金調達が困難となっている人
資金の使い道 事業承継計画実施に必要な設備資金および長期運転資金
融資限度額 直接貸付 7億2千万円(別枠)
利率(年)

条件1に該当する人物 4億円まで 特別利率①(上限3%)
条件1に該当する人物 4億円超  基準利率(上限3%)

条件2に該当する人物 4億円まで 特別利率①(上限3%)
条件2に該当する人物 4億円超 基準利率(上限3%)

条件3に該当する人物 4億円まで 特別利率②(上限3%)
条件3に該当する人物 4億円超 基準利率(上限3%)

条件4に該当する人物 4億円まで 特別利率①(上限3%)
※付加価値向上計画を作成し、
同計画において新たな雇用が見込まれる方は、特別利率②
条件4に該当する人物 4億円超 基準利率(上限3%)

条件5に該当する人物 基準利率(上限3%)

返済期間 【設備資金】
20年以内(うち据置期間2年以内)

【運転資金】
7年以内
(うち据置期間2年以内)

※公庫融資借換特例制度を適用する場合は8年以内
(うち据置期間原則1ヵ月以内)

担保・保証人等 要相談
申込み方法 日本公庫各支店の中小企業事業の窓口

まとめ

事業承継は多くの経営者を悩ませていますが、金融機関に相談することで円滑に進めることが可能です。

特に事業承継後の納税資金や新規事業に関する運用・設備資金の調達もできるため、経営を安定化させやすくなります。

専門機関に相談するのも良いですが、ぜひ金融機関の利用も検討してみてください。

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(編集:創業手帳編集部)