事業承継を株式譲渡で行うはどうしたらいい?
事業承継は、社内の従業員や親族へ承継引き継ぐ内部承継と、M&Aもしくは外部経営者に引き継ぐ外部承継があります。
事業承継を株式譲渡で行うのは一般的な方法ですが、税金がかかる場合があるので注意が必要です。
株式譲渡についてメリットと注意点を解説しますので、参考にしてください。
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目次
株式譲渡とは?
- 株式
- 自社株
事業承継に伴う株式譲渡は、株式を売却して買い手に譲渡することです。
株式譲渡は、秘密保持契約書を締結してから株式の対価が授与され、株主名簿を書き換え取引は完了します。
よって、他の事業承継やM&Aの手法と比較してみると、条件交渉などがシンプルなため事業承継でよく使われています。
これから、株式と自社株について具体的に解説していきます。
株式
世間的に株と呼ばれるものは正式には株式であり、資本金を確保するため株式会社は出資してくれた人に株式を発行します。
つまり、株式を保有するということが経営者であるということになります。
自社株
自社株は、会社で発行された株式を保有することだけでなく、その株式自体のこととなります。
商法においては、会社にとって公正ではない取引が生じるリスクがあるので、会社が自社株を売買することを禁止しています。
しかし、1994年に商法改正が改定されたことによって、一定の条件の範囲内においては自社株を買ったり保有したりということが認められるようになりました。
自社株の消却を行うための金銭は、法改正によって土地再評価益の一部や資本準備金までと比較的広範囲です。
また、令和2年度末までという時限措置ですが、株式譲渡損益へ課税を繰延する措置が規定されています。
株式譲渡で事業承継を行う方法とは?
- 手続き
- 必要な書類
- 注意点
株式譲渡で事業承継を行う場合は、様々な手続き実行することが必要です。
これから、株式譲渡で事業承継を実行するための手続きや方法について解説します。
手続き
基本的には、会社に譲渡承認請求を行ったうえで承認機関で承認を受けますが、各会社の承認機関や機関構成ごとに手続きが異なるため注意してください。
中小企業での株式譲渡は、取締役会を設けていないこともあるため、承認機関が株主総会になる場合もあります。
手続きの方法は、株式譲渡を希望している株主が譲渡承認を請求をする場合だと、会社に株数と相手の名称や氏名、そして指定する買取人の買取請求をオープンにして、譲受人に株式を譲渡するように請求していきます。
また、臨時株主総会を開催し、株式譲渡承認に関する決議を実施したうえで、契約書を交わすことができたら株式譲渡は完結です。
必要な書類
取締役会を設けていない会社が株式譲渡を実行する場合は、譲渡承認機関が株主総会の立場を担うことになりますが、譲渡手続きをする際に必要な書類は以下になります。
- 株主総会招集に必要な取締役の決定書
- 株式譲渡を承認するための請求書
- 臨時株主総会による招集通知書
- 臨時株主総会による議事録
- 株主の名簿
- 株式譲渡による契約書
- 株主名簿記載事項の証明書
- 株式譲渡承認による通知書
- 株式譲渡による契約書
中小企業においては株券を発券しない会社が多数ありますが、その場合は株券のかわりに会社の株主名簿に記載されます。
株主名簿の名義を変更しないと、株主として地位を確立することができません。
なお、株券不発行会社においては、株主であるかどうかは株主名簿に記載されていることが条件なので、株式譲渡によって事業承継が実行されてから株主名簿の名義を書き換える手続きを行うことが必須です。
注意点
- 同族会社の株式譲渡で簡単に手続きを完結する
- 法務局へ申請する必要がなく確実に手続きされているか不明
- 非上場企業の譲渡所得について損益通算が不可能
株式譲渡を実行する場合に注意すべきことは、主に上記の3点が挙げられます。
家族や同族会社間で譲渡する際には、株主総会などを設置することなく、株主総会議事録の資料を作成するケースが見られます。
ただし、家族同士で関係が良好な状態なら問題ありませんが、家族間でも家族以外でも関係性があまり良くない場合は、後にトラブルになる可能性もあるので注意しましょう。
また、法務局へ申請する必要がありませんが、行政についての専門家が確認をしないため、手続き上にミスがないようチェックを怠らないようにしてください。
株式譲渡で事業承継を行うメリットとは?
- 現金を獲得
- 従業員への影響が最小限
- 手続きが簡易的
- 売買でのメリット
- 贈与でのメリット
- 相続でのメリット
株式譲渡で事業承継を行うメリットは、主に上記の6点が挙げられます。
これから、各メリットについて具体的に解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
現金を獲得
事業承継を実行するメリットの一つは、現金を獲得することができるということです。
他の事業を展開することを検討しているのであれば、会社の株式を譲渡したその資金で、新たな事業に挑戦することができるでしょう。
従業員への影響が最小限
株式譲渡で事業承継を実施する際には、一般的に経営者自体はそのままで株主だけが変わることが多々あり、営業スタイルを崩さずに会社経営の続行が可能です。
また、株式譲渡の条件の一つとして、従業員の雇用について確実な交渉をしておくことで、社員への影響が少なくなるので事業承継後のトラブルも抑止できます。
手続きが簡易
株式譲渡をする場合、他の手法より簡単に手続きが行えるという点もメリットです。
株式の売買契約書を作成して、株式の対価を払込みすることで株式譲渡の手続きは完了なので、とてもシンプルです。
売買でのメリット
株式譲渡の売買では、売り手側は資金を調達することができるため、廃業コストがかかりません。
また、売買においては条件をつけて株式譲渡することが可能なので、売却益を得ることもできます。
贈与でのメリット
贈与で事業承継を行う場合、自社株の評価額が低下している時期を見計らい、進めることが可能です。
また、生前贈与により無償で家族などに株式譲渡を実行することもできるのはメリットでしょう。
相続でのメリット
家族などへの相続を株式譲渡を行うメリットは、経営者の廃業コストを抑えられることです。
また、無償で事業を承継することで、事業を展開するための費用を節約することも可能です。
株式譲渡で事業承継を行うデメリット
- 債務が引き継がれる
- デューデリジェンスの手間がかかる
株式譲渡によって事業承継を行う場合は多くのメリットが生まれますが、上記のようなデメリットもあります。
これから、株式譲渡で事業承継を行うことで生まれるデメリットについて具体的に見ていきましょう。
債務が引き継がれる
株式譲渡での事業承継は、相手の会社が保有している自社株を含めて経営権を獲得するだけでなく、その会社の債務や債権も引き継ぐことになります。
これに関しては、買い手側の会社にとってのデメリットになりますが、債務も負うということに注意しましょう。
デューデリジェンスの手間がかかる
売買で株式譲渡が行われた場合、売却側の会社に対して買収監査などDD(デューデリジェンス)を行わなければなりません。
DD(デューデリジェンス)とは、対象企業のリスクや価値などを調査することですが、それには膨大なコストや時間がかかる可能性もあります。
株式譲渡の注意点
- 株券不発行会社における株主名義の書換
- 契約合意は両者間で取っておく
- 譲渡の際に発生する税金
株式譲渡を行う上で注意すべきことは、主に上記の3点が挙げられます。
これから、注意すべき点について具体的に解説していきます。
株券不発行会社における株主名義の書換
株式譲渡を行う際には、株券不発行会社と株券発行会社とでは手続きが異なります。
そのため、会社の登記情報や定款などでチェックしておきましょう。
契約合意は両者間で取っておく
最終条件を交渉する場合は、互いの認識をすり合わせることが大切になります。
後のトラブルを回避するためにも、契約合意は必須です。
譲渡の際に発生する税金
株式譲渡で獲得した所得は、所得税などが課せられるのが一般的です。
収入から取得価額と必要経費を差し引いた所得が「譲渡所得」となり、所得税・住民税・復興特別所得税に加え、売却益の20.315%がかかってきます。
また、親族内での事業承継によって贈与や相続が実行された場合には、贈与税や相続税がかかります。
税金を支払うのは次年度なので、支払う資金を全て使い果たしてしまわないように注意しましょう。
まとめ
株式譲渡での事業承継は、有償で実行される売買だけでなく、従業員や家族などに無償で相続や贈与されるケースもあります。
事業承継を株式譲渡で行う際には、現金を獲得できたり手続きが簡易的だったりと多くのメリットもありますが、後々トラブルが起こらないように契約合意をしっかり行い、注意点を理解した上で実行しましょう。
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(編集:創業手帳編集部)