事業承継において支援サービスは利用すべき?
現在経営者の高齢化や後継者不在は深刻化しており、2020年には休廃業件数が過去最多となる5万件弱になりました。
このような状況を受け、公的・民間がこぞって「事業承継の支援サービス」に力を入れているので、事業承継を検討している方の中には、支援サービスの利用を考えている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、事業承継の支援サービスについて、公的サービスと民間サービスのメリット・デメリットも含めて解説します。
事業承継の支援サービスを利用したいと考えている経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
事業承継には支援が必要?
現在多くの経営者が、後継者の確保に苦戦していると、データにより明らかになっています。
帝国データバンクの企業動向調査によると、2019年時点では後継者の不在率が65.2%となっており、6割を超える経営者が後継者の不在に悩んでいる状態です。
また、経営者の高齢化も深刻化しており、中小企業庁が発行している「中小企業白書」によると、1995年では年齢のピークは47歳でしたが、2015年には66歳となっています。
後継者の確保に苦戦する現代だからこそ、支援サービスを利用して早めの人材確保を行うのがおすすめです。
事業承継の支援を受けるために誰に相談する?
事業承継の支援を受けるようと思ったとき、多くの経営者は誰に相談しているのでしょうか。
「企業経営の継続に関するアンケート調査(中小企業庁委託)」では、経営者が事業承継の支援先として相談した相手は以下のようになっています。
顧問の公認会計士・税理士:72.9%
親族、友人・知人51.4%
取引金融機関:47.2%
親族以外の役員・従業員:37.8%
他社の経営者:34.5%
取引先の経営者:30.4%
経営コンサルタント:26.0%
顧問以外の公認会計士・税理士:19.2%
弁護士:12.9%
商工会・商工会議所:8.9%
民間のM&A仲介業者:6.9%
事業引継ぎ支援センター:2.5%
よろず支援拠点:1.7%
他社や取引先の経営者に相談している例もありますが、それらを除き相談先を大きく分けると「民間サービス」と「公的サービス」です。
民間サービス:「公認会計士・税理士・弁護士」「経営コンサルタント」「M&A仲介業者」
公的サービス:「事業引継ぎ支援センター」「よろず支援拠点」
公的事業承継支援サービス
公的事業承継での主なサービスは以下の5つです。
- 事業引継ぎ相談窓口・事業引継ぎ支援センター
- 後継者人材バンク
- よろず支援拠点
- 事業承継ガイドライン
- 農林水産省の手引書
事業引継ぎ相談窓口・事業引継ぎ支援センター
最も規模が大きく支援を熱心に行なっています。
事業引継ぎ相談窓口は全国47都道府県にありますが、事業引継ぎ支援センターに関しては、北海道、宮城、東京、静岡、愛知、大阪、福岡です。
後継者人材バンク
後継者人材バンクは、事業引継ぎ支援センターの事業の1つで、後継者のいない経営者と企業志望の人材を引き合わせるといった支援を行います。
よろず支援拠点
よろず支援拠点は、国が設置した経営相談所です。
事業承継はもちろん、創業・売上拡大・事業再生などの様々な相談を行うことができます。
なお、よろず支援拠点は47都道府県に設置されており、相談を受けるコーディネーターの経歴がホームページ状で確認できるので、安心して利用することができるでしょう。
事業承継ガイドライン
事業承継のガイドラインとは、中小企業庁が公表している事業承継に関する手引書です。
全96ページの冊子には、事業承継に関する情報が詳しく書かれていますが、専門的な記載が多いため、具体的に事業承継の進め方を理解するのは難しいと感じる方もいるかもしれません。
ただし、大枠の知識を身につけるのには非常に役に立ちます。
農林水産省の手引書
農林水産省が、農林経営者向けに公表している手引書です。
農業経営で事業承継を考えている場合は、必ず目を通しておくとよい内容になっています。
民間事業承継支援サービス
- 士業の専門家
- M&A仲介業者
- M&Aマッチングサイト
民間の事業承継支援サービスは主に上記3つです。
士業の専門家
公認会計士・税理士・弁護士・司法書士などといった士業の専門家です。
売却に贈与・相続が関わる事業承継では、税金の問題を避けては通れません。
なお、親族での承継の場合、税理士に税金の計算を委託し、司法書士に依頼して役員変更登記をすることで、事業の承継が完了することもあります。
M&A仲介業者
M&Aなど第三者承継の場合は、M&A仲介業者を活用するのがおすすめです。
M&AのプロであるM&A仲介業者は、最大限に企業価値を引き出し、売却価格を引き上げるノウハウを持っています。
M&Aマッチングサイト
「自分の手で買い手を探したい」「小規模のM&Aを希望する」という方は、M&Aマッチングサイトを利用しましょう。
最初から最後までサポートを行うわけではないので、手数料も割安に設定されている場合が多いです。
公的サービスと民間サービスのメリット・デメリット
公的と民間サービスには、それぞれメリット・デメリットが存在します。
公的事業承継支援サービスのメリット
公的事業承継サービスは、費用を抑えることができるというのが大きなメリットです。
もちろん、実際に事業承継を行う際には専門家に支払う費用が発生しますが、公的事業承継サービスへの相談は基本的に無料となっています。
また、公的機関であるからこそ、公平な立場からアドバイスを受けることができる点も魅力的です。
民間事業承継サービスとなると、事業承継を進めることで利益を得ようとしているのではないかと考える方もいるかもしれませんが、公的事業承継サービスであればそのような心配は不要です。
公的事業承継支援サービスのデメリット
公的事業承継支援では、民間事業承継サービスに比べるとスピード感が感じられない、支援実績が少ないという点がデメリットです。
現在では、公的事業承継サービスも支援件数を伸ばしてはいますが、やはり民間事業承継サービスに比べると支援実績の少なさは否めません。
民間事業承継支援サービス
豊富な支援実績から質の高いアドバイスやサービスを受けられる可能性が高いという点が、民間の事業承継支援サービスの大きなメリットでしょう。
民間では事業承継が成功しない場合、自分たちの事業にも影響が出るため、確実なサポートを行なってくれるでしょう。
また、M&A仲介業者に関しては成果報酬型の料金体系になっている場合が多いため、全力で買い手を探し価格交渉を行なってくれます。
民間事業承継支援サービスのデメリット
民間の事業承継サービスを受けるには費用の高さがデメリットになります。
士業の専門家で数万円から数十万、M&A仲介業者であれば成果報酬となるため、かなり高額なるケースもあります。
また、公的サービスと違い、当然自社の利益も絡んでくるため、公平でない意見をしてくる可能性も否定できません。
民間の事業承継支援サービスを利用する場合は、経営者として精査・吟味する必要があります。
まとめ
事業承継は専門的な知識が必要なこともあり、一朝一夕で行えるものではありません。
だからこそ早い段階で検討を始め、事業承継支援を利用しながら慎重に進めていくのがおすすめです。
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(編集:創業手帳編集部)