中小企業庁による「経営承継円滑化法」改正
昨今、企業の数が減少している傾向にあり、2009年に421万社あった会社が2014年の時点では382万社にまでなりました。
企業が大幅に減少した理由は、中小企業経営者における高齢化が進行したことにより、後継者へ事業承継ができず、やむなく廃業しているのが原因とされています。
そこで政府が中小企業における事業承継をサポートするべく、2018年に改定された事業承継税制に伴い、経営承継円滑化法の改正も実施されました。
そこで今回は、事業承継をスムーズに行うための「経営承継円滑化法」について徹底的に解説します。
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目次
経営承継円滑化法とは何か
- 改正された目的
- 現行制度における課題
経営承継円滑化法は、中小企業が事業継承で相続する際の遺産分割・資金需要・税負担についての課題などを解決・支援を目的とし2008年に施行されました。
2018年度には、税制改正が行われたことにより、経営承継円滑化法の条文についても改訂されました。
これから、経営承継円滑化法が改正された目的や今後の課題について説明します。
改正された目的
2018年に条文が改正された大きな目的は、会社の経営者が親族以外の人に事業承継をスムーズに行えるため、中小企業の事業承継などをサポートする機能を強化、そして小規模企業共済法が一部改正されたことで事業承継を円滑化させることです。
2020年の帝国データバンクの”全国企業「後継者不在率」動向調査”によれば、2020年に事業承継が親族内で引き継がれた割合は34.2%と半数を切っている状態なため、親族以外で事業継承をスムーズに行うための法律改正が必要とされるようになりました。
また、従来からサポートしていた創業から事業再生・災害対策などの業務に加えて、事業承継の支援も追加されています。
これ以上中小企業が廃業に追いやられてしまわないように、親族内承継についても廃業と同じ金額の共済金が支給されるよう退職金制度の小規模企業共済についての法律も改正しました。
現行制度における課題
改訂された後の経営承継円滑化法は、事業承継を円滑に行うために遺留分減殺請求で自社株を分散・特別受益・事前放棄制度が上手く活用されていないことが課題です。
また、事業承継を行う際には、会社だけでなく自社株も後継者に集中させなければなりませんが、遺留分減殺請求権で自社株が分散してしまうことが問題となっています。
ちなみに遺留分は民法の規定により、法定相続人が最低限に相続することができる割合です。
被相続人が後継者に株式を100%相続させたいといと遺言で残しても、遺留分を持っている相続人が遺留分減殺請求権を行使すると、一定の割合を相続人に譲渡しなければならないため、結果的に自社株が分散してしまいます。
また、共同相続人の中に経営者から生前贈与を授与した人がいると、相続人同士で公平となるように相続財産に生前贈与の分を追加して計算して、それから再び各相続人へ相続分を算定する特別受益です。
この特別受益があると、事業承継のために経営者(相続人)が生前に後継者へ自社株を贈与していたら、それが特別受益となるため、他の相続人に分配され遺留分と同じ問題が発生してしまいます。
経営承継円滑化法のポイント
- 事業承継税制
- 金融支援制度
法律や条文の改正によって事業承継がスムーズに実行できるようになった経営承継円滑化法ですが、ポイントは事業承継税制と金融支援制度でしょう。
これから、それぞれのポイントについて具体的に説明していきます。
事業承継税制
事業承継税制は、現・経営者から相続や贈与などにより特例認定承継会社の非上場株式を受け取った際に、全ての非上場株式の課税価格について、特例後継者が死亡するまで納税を猶予する法律です。
施行規則は1名の後継者とされていましたが、今回の法律改正で最大3名の後継者に承継することができるようになりました。
また、経営者以外の人から贈与されて株式を受け取る場合であっても、5年以内に申請書を提出することで特例制度の対象になります。
この特例は令和9年、2027年12月31日までの時限措置、つまり期間内に実行された贈与や相続が対象となるので注意してください。
金融支援制度
経営承継円滑化法において、分散された自社株式を買い取ったり相続税を支払うための資金調達をサポートしたりする制度があり、都道府県知事の認定を条件として融資を受けることが可能です。
また、法律が改正されたことによって、経済産業省の管轄である独立行政法人「中小機構」の支援範囲が広がり、中小機構から貸付や共済などの金融面でのサポートも受けられるようになりました。
経営承継円滑化法を受けられる要件
経営承継円滑化法による民法特例が適用されるには、一定の条件を満たさなければなりません。
その条件は、企業の代表者が次期後継者に株式などを贈与した際に、相続人となる全ての人が合意したことに対して「会社が所在している知事の認定」がある、さらに継続的に確認されていることです。
対象者については、特例中小企業者・旧代表者・後継者が該当し、特例中小企業者については中小企業のうち一定期間以上、継続して事業を行っている、経済産業省令で定める要件に該当している非上場会社です。
特例中小企業者の旧代表者は、推定相続人の中で最低でも一人以上に対して、株式などを相続や贈与したことがある人のことを指します。
後継者とは、旧代表者から特例中小企業者の株式などを贈与・相続した人、もしくは贈与や相続された株式を得ることができた人で、該当の中小企業による議決権を過半数以上保有する代表者のことです。
経営承継円滑化法の利用方法
- 特例承継計画書を作成
- 添付書類一式を用意し自社が籍を置く都道府県へ提出
経営承継円滑化法を活用するためには、主に上記の2点を実行するようにしましょう。
これから、活用方法について具体的に説明していきます。
特例承継計画書を作成
経営承継円滑化法を活用するためには、認定経営革新等支援機関から経営についてのアドバイスや指導を受ける必要があるため、まず最初に指導を受けてから『特例承継計画書』を作成します。
国税庁は公開しているWebサイトに特例承継計画書の様式が掲載しているので、ダウンロードして必要事項を記載しましょう。
添付書類一式を用意し自社が籍を置く都道府県へ提出
事業承継税制の窓口は各自治体です。
自社が所在している都道府県に、必要事項が記入された書類一式を送付しましょう。
送付先については以下を参照してください。
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2019/190418shoukeizeiseimadoguchi.pdf
まとめ
事業承継円滑化法が改訂されたことによって、中小企業の経営者が事業承継をスムーズに行うことができるようになりました。
経営者が高齢に差し掛かり「これから事業承継を検討している」「廃業するしかないと悩んでいる」経営者は、経営承継円滑化法を上手く活用して、今まで築き上げてきた会社の技術やノウハウなどを維持してみてはいかがでしょうか。
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(編集:創業手帳編集部)