事業承継時の経営者保証が負担になっている企業は多い!?

現在日本の中小企業では、後継者不在問題が深刻です。

日本は2025年には団塊世代が70歳を迎え、ほとんどの企業の経営者が退くといわれており、後継者がいないことで廃業や解散を視野に入れている企業も少なくありません。

後継候補者が後継者になることを断る理由として、「経営者保証・個人保証がそのまま引き継がれることに抵抗がある」と答える人が多いようです。

経営者保証とは何なのか、そのリスクや経営者に求められる対応、おすすめの相談先について解説します。

 

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経営者保証とは?

経営者保証とは、企業を設立するにあたって金融機関から融資を受ける際に、経営者やその家族が会社の連帯保証人となることです。

経営者だけが保証人になる場合は、個人保証と呼ばれます。

事業や会社を始める際はある程度の資金が必要ですが、計画がしっかりと立てられていないと金融機関は融資をしてくれません。

融資が下りた場合、借りたお金を返せなくなったときに備えて、経営者保証・個人保証が設定されます。

ただし、経営者保証や個人保証は事業承継を行う際に引き継がれるため注意が必要です。

 

中小企業庁も事業承継時の経営者保証解除に向けて動いている

多くの企業の負担になっている経営者保証ですが、中小企業庁は事業承継時に保証を解除できるように動いています。

日本では2025年に団塊世代が70歳になり、それによって多くの経営者が引退することが予想されています。

しかし中小企業庁や中小機構が2018年に行った調査によると、中小企業の経営者約381万人のうち約127万人が「後継者が不在」と答えています。

その理由として「候補者がいない」と答えたのが77.3%、「後継者はいるが承継を拒否された」と答えたのは22.7%でした。

後継候補者がいたとしても、拒否されるケースが多いことがわかります。

 

【後継者が不在である理由】

後継者がいない 77.3%
後継者はいるが承継を拒否された 22.7%

また承継を拒否された理由の59.8%は、個人保証・経営者保証でした。

このように多くの後継候補者が経営者保証を理由に事業承継を拒否しているため、国は事業承継時に保証を解除できるように動いています。

【事業承継を拒否された理由】

個人保証・経営者保証 59.8%
個人保証・経営者保証以外 40.2%

 

事業承継時に経営者保証・個人保証が残っている場合のリスクとは?

・借入金がそのまま引き継がれる
・経営が圧迫されることによる経営者の精神的負担

上記の2つは、経営者保証・個人保証が残っている場合のリスクです。

それぞれについて解説しますので、参考にしてください。

借入金がそのまま引き継がれる

経営者保証・個人保証を付けることによって金融機関から融資を受けることができ、多額の資金を所持した状態で経営を行うことができます。

しかし企業によっては、事業承継時に借入金が残っているケースがあります。

借入金が残っている場合は事業承継時にそのまま引き継がれるため、後継者が前経営者に代わって返済しなければなりません。

経営が圧迫されることによる経営者の精神的負担

経営者保証が残っている場合は返済を続ける必要がありますが、事業承継で相続税や贈与税などが発生した場合は税金の支払いも必要です。

これらによって経営が圧迫されるため、後継者は精神的負担を感じることがあります。

このような精神的負担を避けるために、後継者は事業承継を拒否するのです。

 

事業承継時に必要な経営者の対応

・情報開示要請に対する真摯な応対
・中小企業に求められる経営状況に該当すること

経営者は起業する際に経営者保証を付けて金融機関から融資を受けますが、事業承継を行う際は上記の対応を行うと良いでしょう。

それぞれについて解説しますので、参考にしてください。

情報開示要請に対する真摯な応対

経営者保証を解除してもらいたい場合は、金融機関に対して経営の透明性を示す必要があります。

金融機関が融資を行う際は、融資する企業が問題を抱えていないか、倒産するリスクがないか調査します。

経営者保証を解除するとなると、金融機関は回収不能になるリスクを抱えることになるため、あらためて慎重に検討するにあたって情報開示を要請するケースがほとんどです。

情報開示要請に応じない場合は経営者保証を解除してもらえないため、透明性を示すためにも真摯に対応しましょう。

中小企業に求められる経営状況に該当すること

金融機関は、経営状況もチェックします。

国は事業承継時の保証解除を進めていますが、経営状況が芳しくないと経営者保証は解除してもらえません。

経営者保証の解除は一定水準の売上・利益がある企業に対して行われるため、経営状況もわかりやすくまとめておきましょう。

 

新しく創設された信用保証制度とは?

近年は信用保証制度の特例が設けられており、事業承継をより行いやすくなっています。

事業承継特別保証制度は、令和2年1月1日から令和7年3月31日までに事業承継を行った企業に対して経営者保証の解除を後押しする制度です。

具体的な内容は下記ととおりです。

【事業承継特別保証制度】

申し込み資格 ①3年以内に事業承継を予定している法人or令和2年1月1日から令和7年3月31日に事業承継をしている法人
②下記の4つの条件を満たしている企業

1.資産超過である

2.返済緩和中ではない

3.(借入金・社債-現預金)÷(営業利益+減価償却費))が10倍以内

4.法人と経営者の分離がなされている

申込方法 与信取引のある金融機関経由
保証限度額等 2.8億円(うち無担保8,000万円)
保証期間 【一括返済の場合】1年以内

【分割返済の場合】10年以内

(据置期間1年以内)

対象資金 事業承継時までに必要な事業資金
保証料率 0.45%~1.90%

※経営者保証コーディネーターによる確認を受けた場合は0.20%~1.15%

 

経営者保証に関する相談は?

・事業承継センター・引き継ぎセンター
・全国各地の問い合わせ先
・専門家派遣制度の利用

上記の3つは、経営者保証に関する相談を行う場合におすすめです。それぞれについて解説しますので、参考にしてください。

事業承継センター・引き継ぎセンター

事業承継センターは個人事業主や中小企業の事業承継を支援する事業承継専門のコンサルティング会社で、全国にあります。

経営者保証についてだけでなく、節税対策やM&A、取引先・従業員との信頼関係構築、ブランド・知的資産の承継も意識して支援してくれます。

全国各地の問い合わせ先

全国各地に事業承継を支援する受託機関があります。が地域別の問い合わせ先は下記のとおりです。

【北海道・東北地方】

北海道 (公財)北海道中小企業総合支援センター 011-232-2014
青森県 (公財)21あおもり産業総合支援センター 017-732-3530
岩手県 盛岡商工会議所 019-601-2116
秋田県 秋田県商工会連合会 018-838-0535
宮城県 (公財)みやぎ産業振興機構) 022-722-3895
山形県 (公財)山形県企業振興公社 023-647-0664
福島県 (公財)福島県産業振興センター 024-954-4162

 

【関東地方】

茨城県 水戸商工会議所 029-297-1106
栃木県 宇都宮商工会議所 028-612-3998
群馬県 (公財)群馬県産業支援機構 027-226-5665
埼玉県 さいたま商工会議所 048-845-5200
千葉県 千葉商工会議所 043-445-8205
東京都 (一社) 東京都中小企業診断士協会 03-6228-4084
神奈川 (公財)神奈川産業振興センター 045-633-5107

 

【中部地方】

山梨県 (公財)やまなし産業支援機構 055-243-1895
長野県 (公財)長野県中小企業振興センター 026-227-6111
新潟県 (公財)にいがた産業創造機構 025-250-6034
富山県 (公財)富山県新世紀産業機構 076-444-5689
石川県 (公財)石川県産業創出支援機構 076-267-1244
福井県 (公財)ふくい産業支援センター 0776-67-7422
静岡県 静岡商工会議所 054-275-1881
愛知県 (公財)あいち産業振興機構 052-589-2234
岐阜県 岐阜県商工会連合会 058-274-9723
三重県 (公財)三重県産業支援センター 059-228-3171

 

【近畿地方】

滋賀県 大津商工会議所 077-511-1505
京都府 (公財)京都産業21 075-315-8897
大阪府 (公財)大阪産業局 06-4708-7027
兵庫県 (公財)ひょうご産業活性化センター 078-977-9123
奈良県 (公財)奈良県地域産業振興センター 0742-93-8815
和歌山県 和歌山商工会議所 073-499-5221

 

【中国・四国地方】

鳥取県 (公財)鳥取県産業振興機構 0857-20-0400
島根県 松江商工会議所 0852-33-7481
岡山県 (公財)岡山県産業振興財団 086-286-9626
広島県 広島商工会議所 082-555-9651
山口県 (公財)やまぐち産業振興財団 083‐902-6977
愛媛県 (公財)えひめ産業振興財団 089-960-1127
高知県 高知商工会議所 088-855-5183
香川県 (公財)かがわ産業支援財団 087-802-7070
徳島県 徳島商工会議所 088-676-3310

 

【九州・沖縄地方】

福岡県 福岡商工会議所 092-409-0022
佐賀県 佐賀商工会議所 0952-27-7071
長崎県 長崎商工会議所 095-801-0353
熊本県 熊本商工会議所 096-312-4190
大分県 大分県商工会連合会 097-535-7230
宮崎県 宮崎商工会議所 0985-72-5151
鹿児島県 (公財)かごしま産業支援センター 099-219-8123
沖縄県 那覇商工会議所 098-860-0251

 

専門家派遣制度の利用

専門家派遣制度は無料で年3回まで、弁護士・会計士・税理士などの専門家を事業所に派遣して支援を行うものです。

中小企業が「ガイドライン」を利用できる経営状況にあるかどうかも評価してくれるため、多くの企業におすすめです。

 

まとめ

経営者保証は後継者の負担になりやすいポイントですが、経営状況などによっては保証を外してもらえることがあります。

ただし解除にあたっては経営者が率先して行動する必要があるため、専門家に相談した上で進めていくことをおすすめします。

 

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