事業承継は従業員に対して行われる企業が多い?

事業承継では専門的な知識が必要になるため、多くの企業が悩みを抱えるところです。

事業承継は親族に対して行われるイメージがありますが、従業員に対して行われることも珍しくありません。

従業員に事業承継を行うメリットやデメリットと、一連の流れについて解説します。

 

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事業承継とは?

事業承継とは会社の経営権や資産・負債・経営者の想いを後継者に引き継ぐことで、近年は国全体で事業承継を支援しています。

日本では2025年に団塊世代が76歳以上になるといわれていますが、中小企業の半分近くが後継者がいない・決まっていないという状況です。

後継者が決まっていない企業に残されている道は解散・廃業しかないため、日本の労働生産性を下げないためにも国全体が事業承継に力を入れているのです。

親族外承継とは?

事業承継の主な方法として、「親族への承継」「親族以外への承継」「M&A」が挙げられます。

この中で後継者候補を比較的増やしやすいのが、従業員に事業承継を行う「親族外承継」です。

親族外承継は「従業員承継」と呼ばれることもあります。会社の状況を把握している従業員に託すことで、比較的スムーズに事業を承継できる上に、経営者の想いを引き継ぎやすいというメリットもあります。

 

従業員に事業承継を行う4つのメリット

・他の従業員の理解を得やすい

・後継者候補を増やしやすい

・会社のことをよく理解している

・会社の文化も承継できる

従業員に対して事業承継を行う従業員承継の主なメリットは、上記の4つです。それぞれのメリットについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。

他の従業員の理解を得やすい

従業員を後継者に選ぶ場合は、会社の状況をわかっているため従業員の理解を得やすくなります。

ただし、会社の状況は理解しているものの、経営者の前での姿と現場で働く時の姿は異なる場合があるため、注意が必要です。

例えば、経営者の前ではしっかりとした人に見えても、現場では仕事を怠ける人もいます。

間違った人物を後継者に選んでしまうと、経営が揺らぎやすくなるだけでなく、納得できない従業員が離職してしまうおそれもあります。

適した人物を選ぶと従業員の理解を得やすくなりますが、そうでない場合はさまざまな問題が生じるため、慎重に選ぶようにしましょう。

後継者候補を増やしやすい

会社の経営をゆだねる人物を親族の中から選ぶ企業は多いのですが、従業員に託す場合は後継候補者を増やしやすいというメリットがあります。

ただし、親族でも会社を引き継いでくれる人は少なく、息子・娘が引き継いでくれないために倒産の危機に陥っている企業は少なくありません。

後継候補者が増えることでより良い選択ができることも、従業員承継のメリットと言えるでしょう。

会社のことをよく理解している

会社の経営を従業員に託すと、会社のことをよく理解しているため経営不振に陥りにくくなり、経営が安定します。

経営者の想いを引き継いでもらいやすいことも、大きなメリットと言えるでしょう。

会社の文化も承継できる

仕事の流れなどを理解しやすいだけでなく、会社の文化も承継しやすくなることもメリットです。

「今まで築き上げた会社の文化をそのまま引き継いでほしい」と考える経営者は多いのではないでしょうか。

従業員は、長く働いてきたからこそわかる経営者の想いや文化を引き継ぎやすいため、従業員承継は多くの経営者から注目されています。

 

従業員の事業を承継する際の注意点・デメリット

・資金力がない

・経営経験がない

・後継者を慎重に選ぶ必要がある

・社内改革が起こりにくい

従業員に事業を承継する際は、注意点やデメリットもあります。上記の4つは従業員を後継者に選ぶことのデメリットなので、メリットとあわせて確認しておきましょう。

資金力がない

従業員が後継者になることのデメリットの筆頭は、資金力がないことです。中小企業は大企業と比べて給料が少ないため、従業員に資金力がないケースがほとんどです。

事業を承継する際は事業を買い取る資金が必要ですが、資金力がない人が承継してしまうと承継後に経営が苦しくなった際に対応できません。

事業を承継する従業員に資金力がない場合は、金融機関からの融資などを検討する必要があります。

経営経験がない

仕事の流れは分かっているものの、従業員のほとんどは経営経験がありません。経営経験はすぐに身につくものではないため、時間がかかります。

したがって、事業承継を行うために時間をかけて従業員に教育・研修を施すのが理想です。

後継者を慎重に選ぶ必要がある

事業を従業員に託す場合は、後継者を慎重に選ぶことをおすすめします。前述のとおり、後継者に適した従業員を選ぶと、従業員や取引先から理解を得やすくなります。

逆に適していない従業員を後継者に選んでしまうと、従業員や取引先から理解を得にくいだけでなく、経営状況が悪化しやすくなります。

従業員承継は候補者が多くなることがメリットですが、その分慎重に選ぶ必要があるのです。

社内改革が起こりにくい

従業員に事業を承継する場合は、経営者の想いや社風が引き継がれやすいというメリットがある一方で、社内改革が起こりにくいというデメリットがあります。

新しい事業に取り組みにくくなるだけでなく、今までのやり方を守って安定させようと保守的になりやすくなるのです。

 

従業員に事業を承継する方法・流れ

ここからは、従業員に事業を承継する方法について解説します。従業員承継を考えている人は、ぜひ参考にしてください。

STEP1:現経営者・後継候補者の現状の明確化

まずは、現経営者と後継候補者の現状を明確にしましょう。

いくら事業承継に必要な税金対策や準備を進めても、現経営者が突然亡くなる可能性もあります。

急な相続の発生は負担になりやすいとともに、トラブルにつながるケースが多いです。

また後継候補者の状況や経歴を無視してしまうと、経営経験がない人物に経営を任せて経営不振に陥るおそれがあります。

よって、現経営者と後継候補者の現状は明確にしておきましょう。

STEP2:後継候補者に通達し承諾を得る

現状が明らかになったら、後継候補者に事業を承継することを通達し、承諾を得ましょう。従業員の中から候補者を選ぶ際は、慎重に行う必要があります。

「会社の現状に詳しい」「経営者の想いを引き継いでくれる」といった人物を選んでしまいがちですが、「経営経験がない」「資金がない」といった理由で断られる可能性もあります。

本人の承諾を得た後は他の従業員にも知らせる必要があるため、トラブルが起きないような選び方が求められます。

STEP3:事業承継に関する知識を増やす

次に、経営者・後継者ともに事業承継に関する知識を増やしていきましょう。

冒頭でも触れたとおり、事業承継は内容が難しいため専門家と二人三脚で進めるのが理想ですが、知識がないと専門家の話を理解できない上に、専門家頼りになってしまいます。

専門家も長く会社と関わってきたわけではないため、実際勤めているからこそわかるポイントや課題を見逃すこともあるでしょう。

専門家と二人三脚で事業承継を進めていくためにも、知識は増やしておきましょう。

 

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STEP4:事業承継計画書を作成

専門知識を身につけたら、事業承継に関する計画書を作成しましょう。計画書をしっかり作成することによって、課題を解決しながら事業承継を進めることができます。

中小企業庁の「事業承継ガイドライン」にテンプレートが掲載されていますので、参考にしてください。

STEP5:後継者の育成

計画書の作成と同時進行をしたいのが、後継者の育成です。

従業員は会社で何年も働いているため、仕事の流れや全体像は把握していますが、経営経験がない人がほとんどです。

普段の仕事だけでは、経営に必要な経営戦略や人事戦略、コミュニケーション戦略について学ぶことはできません。

後継者の経験不足で、承継後に会社が倒産・解散してしまうケースもあります。

近年は後継者の育成を目的としたセミナーやスクール、塾があるため、参加して知識を身につけることをおすすめします。

STEP6:従業員や親族・取引先への連絡

後継者を育成する際は、そのことを他の従業員や親族、取引先に伝えましょう。取引先との関係維持も重要ですが、親族への配慮も必須です。

親族に配慮が足りないと相続時に大きなトラブルに発展するおそれがあるため、連絡や配慮は最優先で行うことをおすすめします。

STEP7:会社の引き継ぎ

次に、会社の引き継ぎを行います。会社の引き継ぎは繁忙期などはなるべく避け、ある程度業務が落ち着くタイミングで行うとよいでしょう。

また、引継ぎは専門家立会いの下で行うのが理想です。

 

まとめ

事業を承継する方法はたくさんありますが、従業員に事業を承継する場合も多くのポイントを意識して行う必要があります。

従業員は会社の状況を理解しているため油断しがちですが、「経営経験がない」「資金力がない」といった課題が出やすいため注意が必要です。

専門知識を身につけて行動することで事業承継の成功率が高まるため、現経営者・後継者ともにしっかり知識を身につけていきましょう。

 

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