事業承継後の命運は挨拶文がカギを握る!?
事業承継は多くの経営者や後継者を悩ませている問題ですが、事業承継が実施できたら終わりというわけではありません。
事業承継後には、今までの取引先や従業員に挨拶を行う必要があり、特に、取引先を引き継いだ場合には重要です。
良好な関係づくりを行うためには、失礼にあたらない挨拶文を作成する必要があります。
どのような挨拶文が好ましいのか、挨拶文の文例や送付方法について解説しますので参考にしてください。
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目次
なぜ挨拶文が重要なのか
- 取引先の混乱や不安を避ける
- ビジネスマナーがあるという信頼感の獲得
取引先の混乱や不安を避ける
取引先の経営者が変わった場合は、多くの企業が混乱します。
実際にイメージしてもらえるとわかりやすいですが、自社が取引をしている企業の経営者が何の報告・連絡もなく変わっていたらどのように感じるでしょうか?
経営者が変わることによって、今までの価格での取引ができなくなる場合や、方向転換をして取引がなくなるケースも少なくありません。
挨拶文を送ることで顔合わせを作る機会を設けることもできるとともに、取引先の混乱や不安を避けることが可能です。
ビジネスマナーがあるという信頼感の獲得
日本らしいポイントとしては、挨拶文で信頼感の獲得ができるという点です。
日本は海外と比べるとビジネスマナーに厳しい傾向があり、丁寧な対応を行わない企業に対しては、嫌悪感を抱く経営者も少なくありません。
しかし、挨拶文をしっかりと作り込み、送付しておくことで印象も良くなります。
挨拶文の作成方法・記載する内容
事業承継後に送る挨拶文を作成する際には、下記の内容を記載するようにしましょう。
- 文頭の挨拶
- いつ・誰が経営者になったのか
- 事業承継の内容
- これからの連絡先・引継ぎ先
特に重要なのが「事業承継を行った日」「事業承継内容」「連絡先・引き継ぎ」の3点です。
経営者が変わると権利義務関係も変化しますので、混乱を招かないためにも事業承継を行った日・事業譲渡日は記載するようにしてください。
事業承継に関する内容では、親族内承継や従業員承継であればあまり問題がありませんが、事業譲渡・M&Aの場合は大きく状況が変わるため、事業譲渡の場合は記載をしておきましょう。
事業承継に伴う挨拶文の文例
次は方向性別の挨拶文の文例について解説をしていきます。
代表者を交代しただけの場合や株式譲渡・事業譲渡を行った場合では、挨拶文の内容も変わってきます。
それぞれの文例のポイントについて解説をしていきますので、参考にしてください。
文頭の挨拶
文頭の挨拶は、ビジネスレターを送る際には多くの人が目にしたことがあるのではないでしょうか。
下記は、文頭の挨拶と活用できる季語の一例になりますので、参考にしてください。
【文頭の挨拶例】
拝啓〇〇の候、貴社ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。 |
季語 | |
---|---|
1月 | 上旬 新春の候・初春の候・仲冬の候 中旬 寒冷の候・残寒の候・厳寒の候 下旬 厳冬の候・寒風の候・大寒の候 |
2月 | 上旬 厳寒の候・余寒の候・立春の候 中旬 残寒の候・残雪の候・晩冬の候 下旬 春寒の候・寒風の候・梅花の候 |
3月 | 上旬 弥生の候・早春の候・浅春の候 中旬 軽暖の候・春暖の候・春分の候 下旬 陽春の候・春色の候・萌芽の候 |
4月 | 上旬 花冷えの候・桜花の候・春爛漫の候 中旬 春粧の候・春陽の候・仲春の候 下旬 春暖の候・春日の候・晩春の候 |
5月 | 上旬 若葉の候・新緑の候・葉桜の候 中旬 青葉の候・薫風の候・万葉の候 下旬 残春の候・惜春の候・暮春の候 |
6月 | 上旬 入梅の候・薄暑の候・麦秋の候 中旬 梅雨の候・長雨の候・短夜の候 下旬 初夏の候・梅雨晴れの候・向暑の候 |
7月 | 上旬 梅雨明けの候・向暑の候・仲夏の候 中旬 盛夏の候・極暑の候・大暑の候 下旬 灼熱の候・残暑の候・炎暑の候 |
8月 | 上旬 残暑の候・残炎の候・季夏の候 中旬 避暑の候・新涼の候・納涼の候 下旬 暮夏の候・晩夏の候・立秋の候 |
9月 | 上旬 初秋の候・新秋の候・新涼の候 中旬 白露の候・爽秋の候・秋晴の候 下旬 涼風の候・秋冷の候・孟秋の候 |
10月 | 上旬 仲秋の候・爽秋の候・清秋の候 中旬 秋冷の候・秋麗の候・菊花の候 下旬 秋霜の候・錦秋の候・紅葉の候 |
11月 | 上旬 紅葉の候・小春日和の候・深秋の候 中旬 晩秋の候・暮秋の候・初霜の候 下旬 霜秋の候・向寒の候・初冬の候 |
12月 | 上旬 師走の候・初冬の候・季冬の候 中旬 霜寒の候・寒気の候・激寒の候 下旬 歳末の候・歳晩の候・忙月の候 |
事業承継を行った旨を記載【代表者交代】
事業承継でも、従業員や子ども・親族間での承継を行う場合は、代表者交代の旨を書くようにしましょう。
【代表者交代の例文】
さて、この度〇〇の後任として代表取締役社長に就任いたしました。つきましては、会社の発展に一意専心してまいる所存でございます。今後とも倍旧のご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。 |
ポイントとしては、誰が後任についたのかを記載するようにしてください。
事業譲渡ではない場合は「引き続きご愛顧いただけるよう」記載することで、今までと同様の関係を気付いてほしいと相手企業にも伝わりやすいです。
事業承継を行った旨を記載【株式譲渡】
株式譲渡の場合は、下記の2通りのような例文にするのがおすすめです。
【株式譲渡の例文】
・さて、この度〇〇株式会社は△△株式会社に株式を譲渡いたしましたことをお知らせ申し上げます。また弊社株主総会ならびに取締役会におきまして、下記のとおり役員が選任されそれぞれ就任いたしました。 ・さて、この度当社株式会〇〇商事の□□事業は、令和◯◯年◯◯月◯◯日(以降事業譲渡日という)付けで、△△株式会社に譲渡することと相成りました。 事業譲渡日をもちまして弊社◯◯事業は廃業致します。 永きにわたり、弊社□□事業へご芳情を賜りましたこと、心よりお礼申し上げます。 今後は△△株式会社においてより一層のご愛顧を賜りますよう、宜しくお願い致します。 |
記載するポイントとしては、どの会社・人物に株式譲渡するのか、株式譲渡をした日付はいつなのか、引継ぎ先・譲渡先などを明確にするようにしましょう。
近年行われることの多い株式譲渡ですが、廃業した場合は廃業の旨も記載をしておくと混乱を招きません。
事業承継を行った旨を記載【事業譲渡】
事業譲渡の場合は、株式譲渡と似ている内容になります。
【事業譲渡の例文】
・さて、この度〇〇株式会社は 〇〇年〇月〇日をもちまして、〇〇に関する事業を△△株式会社に承継することとなりました。長年にわたり賜りましたご愛顧対しまして、誠に心より御礼申し上げます。 ・さて、このたび〇〇株式会社は令和 〇〇年〇月〇日をもちまして、△△に関する事業を株式会社□□に譲渡することとなりました。長年にわたり賜りましたご愛顧、ご厚情に対しまして、心より御礼申し上げます。今後□□グループの一員となり、新体制の下でより一層社業の発展に努力いたす所存でございます。 |
事業譲渡についてもどこの企業に事業を譲渡したのか、今までのお礼や今後について記載をするようにしましょう。
引継ぎ先
株式譲渡や事業譲渡の部分で記載していますが、事業承継後の挨拶文では引継ぎ先も記載しておくようにしましょう。
引継ぎ先を記載しておくことによって、引継ぎ後も取引をしてもらいやすい上に、相手企業の混乱を招きません。
【引継ぎ先の例文】
従前の〇〇事業〇〇サービスに関するお引き合いご注文は、令和◯◯年◯◯月◯◯日以降、△△株式会社にて承りますので、下記までご連絡の程宜しくお願い申し上げます。 |
本社の住所や問い合わせ先
引継ぎ先と同様に、本社の住所や問い合わせ先を記載しておくようにしましょう。
引継ぎ先とは別の問い合わせ先がある場合は、問い合わせ先を分けて記載することによって、取引先企業が連絡をしやすいです。
挨拶文を送るまでの目安期間は?
事業承継に関する挨拶文は、早めに送るのが好ましいです。
事業承継時は様々なことを行う必要があるため、どうしても忙しくなりますが、挨拶文は目安として1週間から2週間以内には送るのが望ましいです。
挨拶文の送付方法
挨拶文は、郵送やメールで送るのがおすすめです。
ただ、近年では挨拶文もメールが増えていますが、好印象を与えたい場合は手紙形式での郵送が好ましいです。
M&Aや事業承継の専門機関に相談している場合は、挨拶文の内容や送付方法の確認まで行ってくれます。
まとめ
事業承継に関する挨拶文はとても重要で、会社の印象を左右するポイントです。
丁寧できちんとした挨拶文を送ることで「礼儀正しい」「信用できる」という印象を与えるとともに、混乱を招いてしまうのを防ぐことが可能です。
事業承継を行う場合は、挨拶文も早めに取引先に送るようにしましょう。
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(編集:創業手帳編集部)