事業承継で承継するものとは?事業承継を取り巻く問題点
近年、中小企業の経営者の多くが直面しているのが「事業承継問題」です。
今回は、中小企業の経営者の多くが直面している事業承継問題やその解決策について解説します。
事業承継問題に直面している経営者の方はもちろん、後継者が定まっていない経営者の方はぜひ参考にしてください。
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目次
事業承継問題とは?
事業承継問題とは、後継者不在を理由に廃業せざるえなくなってしまう問題のことです。
中小企業白書によると、年間30万社近い企業が廃業する中、後継者不在を第一の理由とする廃業は7万社に上ります。
また、近年では経営者の高齢化も急速に進んでいるため、特に事業承継が大きな問題となっています。
事業承継で承継するものは?
中小企業の事業承継において承継するものは、主に以下の3つです。
- 企業の経営権
- 企業の株式
- 企業の事業資産
企業の経営権
1つ目は会社の経営権です。
代表取締役に就任することはもちろん、企業の経営理念や経営ノウハウ・顧客情報などの知的資産も承継することになります。
企業の株式
2つ目は株式です。
株式を継承することで、株主総会での議決権も承継することになります。
また、後継者に経営権を握らせるために、自社の全発行済み株式の半分以上を所有させる必要があります。
ただし、株式は自社株式であったとしても相続財産です。
後継者と遺族間での遺産相続に発展する可能性があるため、事前に除外合意や固定合意のような対策をする必要もあるでしょう。
企業の事業資産
3つ目は、企業の事業資産で事業を行うための設備や機械、不動産のことです。
また、負債も後継者が引き継ぐことになるので、注意しましょう。
事業承継を取り巻く問題点
事業承継には下記のような問題点があります。
- 経営者の高齢化
- 後継者の決定
- 事業承継税制
それぞれの問題点について解説しますので参考にしてください。
経営者の高齢化
事業承継計画を立てる際は、10年計画が望ましいとされています。
「後継者の教育」「株の移転」「借入金の返済」などに時間がかかることや、後継者に経験を積ませていくという観点からも、この程度の期間は必要になるでしょう。
ただ、中小企業では経営者の高齢化が進んでおり、10年もの時間をかけて事業継承を行うことが難しかったり、後継者が見つかっていなかったりという例も少なくありません。
後継者の決定
帝国データバンク「全国・後継者不在企業動向調査」によると、後継者不在の企業は65.2%となっており、いかに多くの企業が後継者の不在に悩まされているかが見てとれるでしょう。
主な事業承継先には下記が挙げられます。
- 親族内承継
- 社内承継
- M&A(第三者承継)
しかし、親族内・社内承継においては「後継者の教育が難しい」「後継者と古参社員の対立」などの問題を抱えている企業も少なくありません。
事業承継税制
国が事業承継を支援するために「事業承継税制」の改正を行い、従来納税猶予だけであった贈与税や相続税を、手続きを踏むことで免除を受けることが可能になりました。
また、手続き自体も見直されています。
ただし、多くの中小企業の場合、制度が見直されたと言っても士業の専門家に相談しなければ準備ができない難解さは残されているため、免除を希望するのであれば士業の専門家への相談が必要です。
この改正制度は2027(令和9)年12月31日までの時限措置となっているため、出来るだけ早い行動が求められます。
一方で、後継者の不在に悩む現在の中小企業の経営者が、期限付きであるこの制度を利用できるかは疑問も残ります。
事業承継問題の解決策
ここまで解説したように事業承継には様々な問題点がありますが、それでも解決する方法がないわけではありません。
そこでここからは、事業承継問題の解決策について解説していきます。
なお、解決策は後継者がいる場合といない場合で大きく分けられるので、解説は以下のような構成になっています。
【後継者がいる場合】
- 経営レポートを作成する
- 事業継承計画を計画する
- 後継者の教育
【後継者がいない場合】
- M&A
経営レポートを作成する
後継者の教育を行うためには、経営者から見た自社の基本情報から経営環境、将来のビジョンについて、経営レポートを作成しましょう。
具体的には以下のようになります。
基本情報:経営理念や沿革
経営環境:経営者から見たSWOT分析(内部環境における強みと弱み、外部環境における機会と脅威の分析)
将来ビジョン:現在行なっている経営戦略、SWOT戦略から考えられる将来の経営戦略
事業継承計画を作成する
事業承継を行うのであれば、必ず計画書を作成しましょう。
事業承継計画をガント・チャートのような表にまとめることで、内容の漏れを防ぐことができます。
また、計画書を作ることで進捗の確認といったスケジュール管理を行うこともできるため、引き継ぎ時期が決められないといった問題に直面することもありません。
後継者の教育
後継者教育は、事業承継においても最も重要な作業です。
後継者教育の精度により、事業承継後の経営状況が大きく変わります。
後継者教育では「経営ビジョン」「実務能力」に重点をおくことをおすすめします。
- 経営ビジョン
経営者であれば経営ビジョンを描くのはもちろん、経営環境に基づいた新たな経営戦略を打ち出す必要があります。
中小企業白書によれば、事業や会社の将来性を見通せていないと感じている経営者は、25%〜30%ほど存在しているというデータもあるため、後継者が経営ビジョンを持てるよう教育することがいかに大事かがわかります。
経営ビジョンを正しく持てるように、後継者とは出来るだけ頻繁に経営戦略について対話をする時間を持ちましょう。
経営ビジョンについて共通の見解を持てるようになるまで繰り返し対話を行うことで、後継者に正しい経営ビジョンを持たせることが可能です。
- 実務能力
経営者が実務を行うことはあまりありませんが、実務を理解していないと、従業員の信頼を得ることができない可能性が高いです。
ただし、小規模企業の場合だと経営者自ら実務を行う場合もありますので、後継者には実務についての教育を行えるでしょう。
M&A
ここまでは後継者がいる場合の問題解決策について解説しましたが、後継者がいない場合はM&Aを検討する必要があります。
会社を外部に売却することで事業承継を行うM&Aのメリットは、事業継承までの時間が比較的短く済むことです。
一般的に10年計画が望ましいとされている後継者への事業承継ですが、M&Aであれば1年程度で済みます。
また、M&Aによって会社が成長できる可能性もあります。
自社よりもより大きな資金力とノウハウを多く持っている会社に買収されれば、今働いている従業員も安心して働き続けることができるでしょう。
まとめ
事業承継は後継者がいる場合といない場合で大きく変わってきます。
後継者がすでにいるという場合は経営レポートや後継者教育、経営計画の作成などの準備を始めましょう。
後継者がいないという場合は、M&A仲介会社へ一度相談してみるのがおすすめでが、すぐに買い手が見つかるとは限らないので、冷静に判断できるううちに準備しておくのが良いでしょう。
どちらにせよ事業承継を「まだ先のこと」と考えずに、早めの行動を心がけることがポイントです。
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(編集:創業手帳編集部)