事業承継ファンドのスキームは重要

事業承継を成功させるためには、自社に相応しい経営者の育成や対策を取ることが重要ですが、多くの経営者がどのように事業承継を始めたら良いのか、わからない状態でスタートしている場合もあります。

事業承継をスムーズに進行させるためには、後継者になる人の性質を基本にして検討していくスキームが必要です。

そこで今回は、事業承継の成功にはなくてはならないスキームについてご紹介します。

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事業承継スキームとは


会社の事業を現・経営者が後継者に承継する方法を意味します。

中小企業の場合は、現・経営者が自社株式の株主であれば、自社株式を引き継ぐ際に計画的に行う必要があります。

自社株式を次期後継者に引き継ぐための方法として、相続・生前贈与・譲渡とありますが、経営者の親族を後継者とした場合は、どの方法をとっても問題ありませんでした。

しかし、近年では少子高齢化によって、後継者は現・経営者の親族にするとは限らなくなり、様々な事業承継スキームが活用されるようになっています。

事業承継スキームの種類

  • 従業員
  • 持株会社/資産管理会社
  • M&Aに伴う第三者
  • 事業承継ファンドの活用
  • 信託を活用

事業承継スキームには、主に上記の5点が挙げられます。

これから、具体的に事業承継スキームについて解説していきます。

従業員

今までは経営者の親族に会社を承継するのが一般的でしたが、少子化が進行しているため親族内では後継者がいない状態の経営者も多くなってきました。

また、経営者の家族だとしても経営に向いている才能があるとは限りません。

自社の事業やノウハウなどを引き継げる後継者候補を判別するためには、後継者となる人のポテンシャルやモチベーションを見ていく必要があります。

持株会社/資産管理会社

資産管理会社とは、所有している建物や土地・有価証券・設備など、会社の資産を管理するために設立される会社(法人)のことです。

特に、事業を行う会社の株式だけを管理する会社「持株会社」には、後継者が持株会社を設立して、その会社に現・経営者が株式を譲渡する方法と、株式移転という組織再編によって新たに自社株会社を構築させる方法の2つがあります。

こちらの場合は、株主構成に変わりはないので、併せて譲渡する方法を検討するようにしましょう。

M&Aに伴う第三者

M&Aによって第3者へ承継する方法も、近年選択されていることが多い事業承継スキームです。

このスキームは、後継者が不在の状態でも会社を存続させられるのがメリットですが、会社を売却もしくは事業売却を行う点は事前に把握しておきましょう。

ただし、M&Aは売却価格を設定して従業員の処遇確定や債権者を保護するための手続きといった、膨大なプロセスが求められます。

また、M&Aは会社間の取引なので、成否などの全ての交渉は結果で決定される仕組みです。

事業承継をM&Aで行いたい場合は、他社が買収したいと思える魅力を持つ必要があり、当然ながら赤字経営の会社だったり将来性がほぼなかったりする会社には、好条件の買取先が見つかりにくいので注意しましょう。

事業承継ファンドの活用

事業承継ファンドとは、事業承継における問題に悩まされている中小企業に対して経営支援を実施する投資ファンドで、公的なファンドだと中小機構(中小企業基盤整備機構)があります。

中小機構の場合は、最大で発行済株式の5割を出資することができます。

また、プライベートファンドは最終的には第3者に再び売却するケースが多く、事業承継を最大の目標としているので、後継者選定や人材教育などを支援し、スムーズに事業承継を行うことが可能です。

信託を活用

信託を活用する、事業承継のスキームもあります。

信託とは、財産管理を目的として委託者(財産を託す人)・受託者(託される人)・受益者(利益を得る人)が信託契約で結びついて財産を管理・運用します。

信託を活用すれば、もし自分に不慮なことが起こったとしても、受託者が委託者の希望通りに事業承継を進行してくれるでしょう。

事業承継で引き継ぐ要素

  • 資産
  • 知的資産

これから、それぞれの要素について具体的に説明していきます。

事業承継をした後は、技術やノウハウ・取引関係などが経営者個人に集中することが多くなります。

従業員のことや取引先相手のことなど、事業承継後もスムーズな事業運営するためには、承継前に現経営者がしっかりと後継者を育成する期間を設けましょう

資産

株式会社では、会社の資産である株式の譲渡も事業承継で行われます。

株式や事業用資産を相続・贈与する場合、黒字の会社だと膨大な相続税や贈与税が発生するケースもあるので注意しましょう。

ただし、事業承継税制の適用を受けることができれば、事業承継で発生する税金の納税猶予や免税といった措置が可能です。

知的資産

会社に蓄積されたノウハウ・特許・顧客情報などの知的資産は、会社の価値や強みです。

そのため、経営者が自社の価値や強みがどこにあるのかを把握し、それらを後継者に承継しましょう。

事業承継スキームの成功事例

  • 生前贈与を利用した事業承継
  • 生命保険を利用した事業承継
  • 自社株相続に信託を活用した事業承継

生前贈与を利用した事業承継

A社の経営者が親族である後継者に、生前贈与を利用し成功しました。

このケースにおいては、事業承継税制を活用したことで贈与税が全額猶予され、実質贈与税が無い状態で事業承継することができたためです。

生命保険を利用した事業承継

D社の経営者は事業承継を親族とし、その際、相続税の対策で生命保険を利用しました。

事業承継対策の一環として、生命保険の受取人を次期経営者にすることで、相続が生じた時に後継者が保険金等を受け取り、他の相続人から遺留分減殺請求に充てる資金を用意することができました。

自社株相続に信託を活用した事業承継

C社の経営者は親族である後継者を受益者として、信託契約を締結し事業承継を行いました。

事業承継において信託を活用する場合は、親族の間で民事信託の信託契約を締結して親族に無償で財産管理を委託することが多く、種類としては他益信託と自益信託があります。

委託者である経営者が自社株式に信託を設定して、後継者の親族を受益者としたことで事業承継を成功しました。

まとめ

中小企業における経営者の高齢化が深刻化になっていることもあり、事業承継を成功させるためには事業承継スキームが重要です。

事業承継は今までのように親族内で引き継ぐだけではなく、ファンドやM&Aを利用して外部の人と取引する方法も増えています。

自社にとって最適な事業承継スキームを見極めるためには、事業承継に詳しいM&A仲介会社などの専門家に相談することをおすすめします。

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(編集:創業手帳編集部)