株式譲渡で事業承継をする背景

中小企業の経営者にとって、事業承継は大きな課題となっています。

親族内で事業承継できればいいのですが、今は子供たちに苦労をさせたくないという親や、新しい仕事にチャレンジしたいという子供の気持ちがあり、親族内での事業承継が減少しています。

しかし、会社の社員とその家族の生活を守ることは、経営者としての務めです。

親族内で後継者を選ばない場合には、先々に来るタイミングに合わせて、株式譲渡による事業承継の検討が必要になります。

今回は、株式譲渡による事業承継のメリットやデメリット、注意点について解説します。

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事業承継で株式譲渡をする意味


株式譲渡とは、自社の株を買い手側に渡すことです。

中小企業では経営者が株式の大半を保有しているケースが多く、株式を譲渡することで会社のオーナーが変わります。

これまで守り続けてきた会社を受け渡すため、株式譲渡は信頼できる後継者を選ぶ必要があります。

買い手側に株式を購入する資金がない場合には、銀行や投資会社からサポートしてもらえますが、株式譲渡では現在の会社の価値がとても重要で、成長が見込めない場合には、資金的なサポートを受けられない可能性も高いです。

また事業承継後に、お金に関するトラブルが起こることもリスクとして認識しておきましょう。

株式譲渡による事業承継は慎重に進める必要がありますが、一方で時間をかけすぎると後継者が見つからないことも考えられます。

事業承継は早めの準備が大切であり、周りの理解も得ながら計画的に進めるのがおすすめです。

事業承継で株式譲渡をするプロセスとは?


事業承継で株式譲渡をするプロセスは以下のようになります。

  • 株式譲渡の承認請求
  • 株式譲渡契約の締結
  • 株主名簿の書換

株式譲渡の承認請求

まずは、株式譲渡の承認が必要なので、そのための承認請求書を作成しましょう。

承認請求書には、譲渡する株式の枚数と譲渡先の名称を記載します。

事業承継の承認機関が承認しますが、会社の運用形態によって承認機関が違うため注意してください。

会社に取締役会が設置されている場合は取締役会での承認となり、取締役会が設置されていない会社では、株主総会が承認機関となります。

株式譲渡契約の締結

承認請求が可決された後は、株式譲渡契約の締結ですが、後でトラブルにならないよう、契約内容はお互いに納得いくものにすることが重要です。

譲渡する株式の価格設定は、両者間で納得いくものであれば設定金額に条件はありませんし、場合によっては無償での譲渡も可能となります。

株主名簿の書換

株式譲渡の契約を締結した後は、株主名簿の書き換えをしましょう。

その後、株式譲渡された人の氏名や住所の情報、保有している株式の数などが記載された証明書の請求をします。

これは、誰が株主なのかを証明するための大切な書類です。

事業承継で株式譲渡をするメリットとは?


事業承継で株式譲渡する際には、以下のようなメリットがあります。

  • 現金を得ることができる
  • 会社の運営に影響を与えにくい
  • 手続きが比較的簡単

現金を得ることができる

株式譲渡による事業承継では、対価として現金を得ることができるのが大きなメリットです。

株式を保有している段階では「資産」ですが、実際に現金を得ることができると次のステップへ活用できます。

対価として得た現金を老後の費用に充てることができますし、まだ活発的に動きたい経営者は、次の事業への投資を考慮しても良いでしょう。

会社の運営に影響を与えにくい

株式譲渡をしても、経営者が継続する場合があります。

経営者が変わらなければ会社の運営に影響もなく、これまで通り事業を進めることが可能なため、社員にとっても安心です。

また、株式譲渡ではお互いに信頼しあっている状態なので、良い関係性が保たれている場合が多く、経営者が変わったとしても従業員から見れば「前の経営者が選んだ良い経営者」と受け入れやすくなります。

会社の事業内容や経営理念もそのまま引き継がれることが多いため、運営や社員に影響を与えにくいのもメリットです。

手続きが比較的簡単

株式譲渡のプロセスで説明した通り、事業承継の株式譲渡は買い手と売り手の合意ができれば、M&Aと比較すると処理を進めることが楽です。

後継者選びには時間がかかる場合がありますが、買い手が決まってしまえば事業承継をスムーズに完了できます。

事業承継で株式譲渡をするデメリットとは?


株式譲渡のデメリットには、以下のようなものがあります

デメリットをよく理解することで、事業承継のトラブルを防ぐことができるため参考にしてください。

  • 債権債務が引き継がれる
  • 社員が納得しない場合がある

債権債務が引き継がれる

株式譲渡をする際には、会社が持っていた債権債務も引き継がれるため、不良債権や未回収債務がどれほどあるのかは、買い手側が明確に把握しておく必要があります。

そのため、売り手側も隠すことなく現状の経営状態を見える化し、会社の透明性が保たれていないと、後々のトラブルにつながるため注意してください。

社員が納得しない場合がある

モノ言う株主やワンマンの経営者に引き継いだ場合、社員が納得しないこともあります。

事業承継の必要性は理解していても、経営者が変わることで社員の生活や仕事環境に不満が募り、退職されることも考えられます。

社員を納得させるためには、事業承継の計画段階から経営者が現場に説明をし、新しい経営者とのコミュニケーションの場を用意するのがおすすめです。

零細企業であれば社員1人が抜けるだけで大きな損失となりますので、誰もが納得する形で事業承継を完了させるようにしましょう。

株式譲渡をする際の注意点とは?


株主譲渡における事業承継の注意点について解説します。

  • 事業承継のタイミングを見極める
  • 契約の同意には時間をかける

事業承継のタイミングを見極める

株式譲渡における事業承継にはタイミングが重要で、社員のモチベーションが落ちないよう納得した状態で、事業承継するのが大切です。

株式譲渡したことで経営者は安心するかもしれませんが、事業承継の目的は会社の維持と発展であることを念頭におきましょう。

急いで事業承継を進めると後継者選びに失敗するリスクがありますし、事業承継を長引かせると高齢の経営者の場合、手遅れになる可能性も考えられます。

株式譲渡での事業承継は、計画的に進めることができるよう早めに準備するのがよいでしょう。

契約の同意には時間をかける

株式譲渡の手続きが比較的簡単であるため、契約内容の合意がしっかりと取れていないままに事業承継が進む場合があります。

契約書には記載されていないような債権債務・会社が持っている課題・現状のマーケットなども、共有しておくことでトラブルを回避できます。

また、下請けの仕事が多い場合には、主要顧客に説明しておくことも会社の維持に欠かせない取り組みです。

契約の同意に関しては、じっくりと時間をかけてお互い納得した状態になることが重要です。

まとめ

株式譲渡における事業承継のプロセスとメリット・デメリットを解説してきました。

事業承継を成功させるためには、経営者が一人で決断してしまうのではなく、周りに相談をしながら納得の上進めることが大切です。

これまで大切に育てたきた会社と社員だからこそ、最後まで手を抜くことなく事業承継を完了させましょう。

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(編集:創業手帳編集部)